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二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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第十三回 傷

仕事の都合で野宿することは日常茶飯事だった。
どれだけ世界が動こうが、それは変らなかった。
当たり前の日常。

だが、今日からは少しだけ意味合いが違った。
ロストールのクーデターから一週間が経ち、レムオンがアタシの仲間になった。


            『 傷 』


焚き火の音が静かに響くだけの、夜の遺跡。
一部の天井は崩れており、顔を上げれば星空が広がっていた。

「姉ちゃん?」

突然立ち上がったアタシに、チャカが不安げな顔をする。
ロストールの一件以来、チャカはアタシをひどく気遣うようになった。
アタシは第二の故郷を失った。
かりそめではあるけれど「家族」をロストール領に置いてきたままだ。

「交代の時間だから」
「あぁ、うん」

チャカは納得したように笑って旅衣にくるまった。
その隣ではルルアンタが可愛らしい寝息を立てている。

アタシは衣をまとったまま、剣を片手にその場を後にする。

寝床から少し離れたところ。
小さな焚き火の明かりが見える場所に、レムオンは座っていた。
白銀の髪が月光に煌いていた。

「レ~ムオン」

アタシはあえて軽い調子で話しかけた。
振り返るレムオンの肌は、以前より白く美しかった。
ダルケニスである彼の、本当の姿。

「背中が爺くさいぞ」

レムオンの腕を小突き、アタシは隣に座った。

「放っておけ」
「ふふっ、怖い怖い。さ、交代の時間だよ」

いつも通りのしかめっ面を拝めて、正直ほっとした。
今のレムオンは一人にすると何をし出すかわからない。
自暴自棄。
そんな言葉がしっくりくる程、彼の心は疲れきっていた。

「もう少し眠っていても良かったんだぞ」
「足りてるよ。レムオンこそ無理にでも眠った方がいい」

アタシの言葉の真意を探るように、レムオンがアタシの顔を覗く。

「貴族様がすぐにアタシたちの歩調に合わせられると思うなよ?」
「ふっ。もう貴族でもなんでもないさ」

レムオンは言って立ち上がり、アタシの頭を撫でてから寝床に戻った。
頭のてっぺんに残ったぬくもりに触れて、そのまま首筋をなぞった。
理性を失ったレムオンに咬まれた痕が、まだ残っている。
疵に触れた瞬間、色々な情景が思い出される。

(ゼネテス……)

思い出さなければよかった。
鼻水でぐずぐずになりながら、アタシはあふれてくる涙をぬぐった。

助けて、あげられなかった。

アタシは銀竜の首飾りを取り出した。
微かな光に冷たく輝くそれを握って、口元に寄せる。

(ゼネテス、ゼネテス)

事あるごとにアタシを助けてくれたゼネテス。
お節介で、そのくせ優しくて――――エリスに忠義を尽くした男。

「うっ、うぅ……」
「ケイト」

レムオンの声に、アタシの心臓は飛び跳ねた。
戻ってくるとは思わなかった。
どうしよう。
アタシがゼネテスのために泣けばレムオンはきっと傷つく。
ゼネテスを殺したのは、彼だから。


すぐ後ろにある気配にビクビクしながら、アタシは固まった。
レムオンがすぐ後ろに座り、アタシの体に腕を回す。

「ケイト……」

首筋にレムオンの唇が触れた。
ゆっくりと下へと滑り、疵を唇で覆われる。
咬まれる覚悟をしていたのに、一向に行われない。

「な、なにがしたいのよ」
「ゼネテスのことか」

疵口にレムオンの舌が触れる。
生温かい感触にぞくりと背中が震える。

「お前は、俺のものだ」

目をふさがれた。

「俺のものだ」

まるでアタシに言い聞かせるようにレムオンは繰り返す。
疵口を通してレムオンの感情が伝わってくる。
アタシの頭がゼネテスで一杯になっていることを、よく思っていないのだろう。

「でも、アタシは彼を忘れない。
 どんなことがあっても。
 レムオンと結婚したとしても、絶対に忘れない」

レムオンはきっと後悔している。
ゼネテスはどこまでも真っ直ぐで、正しい人だった。
その正しさが、レムオンを踏み誤らせた。

「俺が……憎いか。ゼネテスを殺した俺を愚かだと蔑むか?」

緩んだ手。
アタシはゆっくりと振り返る。
レムオンは苦しそうに顔をしかめていた。

「バカじゃないの?」

傷つけてほしいのか。
罪を明かされたいのか。
そうやって、あえて自分の傷口を広げようとして何になる。

「アタシはアンタを慰める気持ちなんて微塵もない」

レムオンは悲しげに目を逸らした。

「アンタはどうしようもなく愚かだったわ。そして、あのエリスもね。
 アタシたちは、アンタら貴族の愚かさに巻き込まれた。そして故郷さえも失った。
 だから、アタシはどうやったってレムオンを許すこともできないし、慰めてやろうとも思わない」

アタシはレムオンの手を握る。

「でも、好きなんだ」
「ケイト」
「この気持ちは止められないから、どうしようもないから。
 アタシはレムオンが望む限り、そばに居たいと思う」

レムオンはぎこちなく頷き、なにかを思いつめるように目を伏せた。
アタシは銀竜の首飾りを、再び首に掛け直す。
ずっしりと重い飾り。
ゼネテスの命を胸に秘めて思う。

「ロストールから奪ったものを返さなきゃ。
 アトレイア、ティアナ、そして領民たちから奪ったものを返そう。
 それが、ゼネテスへの弔いだ」
「……それで俺は許されるだろうか……」
「どうだろうね」

アタシは空を見上げた。

「少なくとも、アタシは許してあげようかな」
「そうか」

くくっと微かに笑う声。
レムオンはアタシの肩に顔を埋めた。
布越しに感じる涙。
アタシの手を力強く握る大きな手。

この手だけは放しちゃいけない。
そう思い、アタシは強く握り返した。




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*Comment

こんばんわ♪ 

こんばんわ♪

クーデター後(ゼネテス死亡)のレムオンは
ケイトがいないと間違いなく闇に落ちますよね・・
はっきりと好きだって伝えられるケイトが素敵です(´∀`*)
そしてすぐに許す事は出来ないという気持ちも・・

このゼネさん死亡ルートを辿る時に思うんですけど
もしエンディングで一緒になる相手が他の男キャラ(エルファスとかあとエルファスとかたまにネメア)だったらレムオン、どうなるんでしょうね?w





  • posted by kaorin114 
  • URL 
  • 2012.12/26 23:56分 
  • [Edit]

Re: kaorin114 さんへ 

こんばんわ♪
訪問&コメントありがとうございます!
毎日読んでいただけるなんて、幸せすぎますっ(*´ー`*)

> クーデター後(ゼネテス死亡)のレムオンは
> ケイトがいないと間違いなく闇に落ちますよね・・
落ちますね。とことん絶望してしまいそうです。
なので、何周してもレムオンは見捨てられない!

> はっきりと好きだって伝えられるケイトが素敵です(´∀`*)
> そしてすぐに許す事は出来ないという気持ちも・・
レムオンが若干可哀想ですが、それでもケイトはレムオンを見捨てないでしょうね。
ずっと苦しんでいたことを知っているだけに、救ってあげたいと願うんじゃないでしょうか。

> このゼネさん死亡ルートを辿る時に思うんですけど
> もしエンディングで一緒になる相手が他の男キャラ(エルファスとかあとエルファスとかたまにネメア)だったらレムオン、どうなるんでしょうね?w

エルファスの選択肢の多さw

そうですねぇ、闇落ちするんじゃないでしょうか(笑)
それかエストのお手伝いをして、ひっそりと暮らし続けるとか。
なんにしても、可哀想だ。゚(つД`)゚。
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2012.12/27 00:38分 
  • [Edit]

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