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第11回 帰宅

考古学者である僕が家を空けるのは、別に珍しいことではなかった。

レムオン――兄さんが僕を心配することはなかった。
リューガ家としての自覚はないのか、と怒られたこともなかった。

僕の研究を、僕の言動を容認してくれているのか。
あるいは、僕を邪魔者だと思っているのか。

どちらにしろ、良くも悪くも僕は自由だった。

ある日、ロストール郊外のノーブルで反乱があった。
兄さんを探しにノーブルに赴いたのだが、そこで出会った女性が後に僕の妹になるとは思わなかった。

彼女の瞳を見た瞬間、心臓が震えた。
本能的な恐れ、だったかもしれない。
強く生きようとする者の、力強い瞳を持っていた。


――こんな僕とは、ぜんぜん違う。

話に聞くところ、兄さんはケイトを信頼しているんだとか。

「え? あの兄さんが、そんなことを?」

セバスチャンは紅茶を注ぎながら、頷いた。

「ケイト様の根性と可能性を高く買っておられるようです」
「……そう、なんだ」

セバスチャンがカップを静かに置くのを見届けながら、僕はなんともいえない居心地の悪さを感じていた。
子供じみた嫉妬かもしれないけれど。
ケイトに、僕の居場所を奪われた気がしたんだ。

それから数ヵ月後。
町で遺跡や伝承の聞き込みをするうちに、ケイトの名前もちらほら聞くようになった。
活躍すればするほど、僕は耳を塞ぎたくなる。
彼女のことは、人として尊敬しているし好きだけれど。

リューガ家のことになると、また別の話だった。
まったく、身勝手な感情だと思った。

ある日、ケイトとリューガ家で鉢合わせた。

「おかえり、エスト!」
「ただ、いま……」
「今日は遺跡じゃないんだね?」
「う、うん」

ケイトは明るい笑顔を浮かべて、僕のところへ向かってくる。

「ケイトも、今日は仕事じゃないんだね」
「うん。ちょっと疲れたから、しばらく休もうかなって」
「そうなんだ」
「エストも、ちょっと疲れてそう。一緒に休もうよ」
「いや、えっと、僕は資料を――――」

するとケイトは、顔をしかめた。

「ダーメ! 目のした、クマつくってるよ」

僕の腕をとり、兄さんの部屋へと向かうケイト。
用があるときしか近寄ってはいけない、そんな雰囲気を漂わせる兄さんの部屋。
近寄りがたい雰囲気があるのに、ケイトはおかまいなしに兄さんの部屋を開けた。

「ケ、ケイト。怒られるよ……」
「いーじゃん、兄妹なんだから」

もっともらしいことを言って、ケイトはソファにどっかりと座った。
隣をポンポンと叩いているから、隣に座れということなんだろう。
仕方なく、僕は後ろ手で扉を閉めてケイトの隣に落ち着いた。

「くつろぐならリビングで良かったんじゃ」
「やだよ」

ケイトは僕の肩に頭を乗せて、目をつむった。

「……リューガ家って、寒いところだな」
「え?」
「……温かみがないんだ。アタシの家は、父さんも母さんもいなけど。チャカがいて、アタシがいて。
 それなりに温かかったよ。笑って、おかえりって言ってくれる人がいるって大事だと思うんだ」

リューガ家にはそれがない。
セバスチャンをはじめとする従者や召使はたくさんいて、おかえりとは言ってくれるけど。
そういうことじゃない、と思う。
ケイトはそう言った。



「お前達、なにをしている?」

突然、扉が開いたかと思えば、兄さんが怒った顔で僕達を見ていた。

「ご、ごめん兄さん!」
「いーじゃない、別に」
「ここは仕事場だ。勝手に入るなど非常識だろう。すぐに出て行け」
「そうだよね。ごめん、兄さん。ほら、ケイト行こう?」

ケイトは素直に立ち上がった。
なにか言い返して、兄さんの機嫌をさらに損ねるかと思っていた。
ほっとして、僕はケイトの後に続こうとした――その時だった。

「レムオンのバカ!」

ケイトは手を振り上げ、兄さんの頬を容赦なく張り倒した。

「貴様っ」

兄さんの激昂など素知らぬふりで、ケイトは僕に振り返った。

「アタシ、わかったわ! この家が、こんなに冷めている理由」
「え?」
「誰もレムオンを叱らないからよ!」

ケイトは兄さんを見ると、兄さんの両頬に手を添えた。

「帰ってきたら、ただいま、でしょう?」
「なっ!? 俺を馬鹿にしているのか!!」
「子供でも言えるんだぞ、レムオン」

ケイトは兄さんの手をぎゅっと握った。

「帰る家があるのに、ただいま、おかえり、がないなんて寂しいじゃないか」

兄さんは黙ったまま、苦々しい顔をしてそっぽむく。
あの兄さんが、なにも言い返さないなんて。

「レムオン、エスト。ここはアンタたちの家だ。アンタたちが安心して来られる場所だ。
 それを大事にしなくちゃいけない。……アタシと、違うんだから」
「僕たちの、家……」

なぜだか、安心する響きだった。
帰ってきてもいいのか、と思える。
でも、と思う。
兄さんが、歓迎してくれなければ……僕が居る意味なんて。

「二人とも、頭を冷やしなさい」

ケイトが出て行き、僕と兄さんの二人だけになった。
兄さんと僕は気まずい空気に取り残された。

どうしよう。
僕も出て行ったほうがいいのかな。

どちらも動き出せずにいるとき、兄さんから「エスト」と呼ばれた。
名前を呼ばれたのは、ずいぶん久しぶりだ。

「な、なに?」
「遺跡は危険だと聞いている。だから、もう少しこまめに帰って無事を知らせろ」
「兄さん……」
「研究の成果が出ればリューガ家の名声も高まる。生きて帰って来い、そして成果を上げろ」
「はい」

兄さんが、物凄く不機嫌そうに顔をしかめた。
照れているんだな、とわかった。
たぶん、この機会を逃したら兄さんの言葉はもう聞けなくなる。
こんな恥ずかしいこと、兄さんが二度も言うはずがないから。

「僕、帰ってきてもいいんだよね」
「あたりまえだろう」
「うん。あたりまえ、だね」

僕と兄さんの心の距離が、少しだけ縮まった気がした。
それから僕は、兄さんの為に濡れたタオルを持ってきた。
ケイトの平手打ちで、真っ赤になった兄さんの頬。

「それにしても兄さんに手を上げるなんて、ケイトって偉大だね」
「命知らずなんだ。ノーブルの件でもな」
「僕らで、守ってあげられたらいいんだけどね」
「放っておけ。俺たちが手を貸さなくても、あいつは大分しぶといぞ」


そんな気もするなぁ、なんて納得したら笑ってしまった。
兄さんもつられて、軽く笑った。

「ただいまー!」

ケイトが部屋に戻ってくる。
僕らは声をそろえて言った。



――――おかえり。





ありがとうございました&お疲れ様でした

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*Comment

こんばんわ♪ 

こんばんわ♪
デジャヴさん、今回のお話も素敵過ぎます!
落ち込んでいる時や、疲れている時に凄く励まされてます♪

ナイス、ケイト!
エストは本当の自分の家なんだから、もっと帰ってくればいいのにw
レムオンがぶたれる所なんて、エストは初めて見たでしょうね(´∀`*)
こんなに素敵なお話を本当にありがとうございます!




  • posted by kaorin114 
  • URL 
  • 2012.12/24 01:58分 
  • [Edit]

Re: kaorin114さんへ 

こんばんわ!!
いつもありがとうございます><
ありがたいお言葉ですよ、本当に;;
少しでもお力になれたのなら、幸いです。

レムオンとエストが絡む話は少ないので、本当に兄弟という設定がもったいないw
活かすべきですよね!!笑
エストは考古学から離れると、極端に控えめになる気がします。
なので、ケイトと日常を過ごせばハラハラさせられるだろうなぁ。
そういう思いで今回執筆しました。

訪問&コメントありがとうございました。
またいらしてください!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2012.12/25 18:45分 
  • [Edit]

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