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第十回 ありがとう

私がリューガ家に仕えて約一年になろうとしていた。
最初こそ先輩メイドに怒られっぱなしで、何度も泣いて、逃げ出そうと思ったけれど。
一年が経ってみると、「根性あるね」と認められるようになってきた。

しかし、一年生ができることは限られている。

当主のレムオン様をはじめとする、リューガ家の方々には近づくことができなかった。

誰もが憧れるレムオン様。
美しい容姿、寡黙な性格、背を伸ばして颯爽と歩くお姿。
どれをとっても眩しくて、格好良くて……惹かれる人。



ある日。

レムオン様の腹違いの妹――といわれている女が突然やってきた。
どこをどうみたら似ているのだろう。
……田舎に住んでいるような女ではないか。

セバスチャンに呼ばれ、普段は使われていない婦人室へ向かうと。
そこには、あの女がいた。

「レムオン様の妹君であるケイト様だ。
 冒険者でおられるケイト様が、リューガ家に戻ってきた際、お前がお仕えするように」
「や! どうぞよろしく」

軽っ! この人――じゃなくて、ケイト様はとてもノリが軽い人だった。
貴族を一年も見てきたが、こんな振る舞いをする貴族は初めてだ。
いや、冒険者といったか。

「よ、よろしく……お願いいたします」

それから、私はケイト様にお仕えすることになったのだが。
あの日以来、彼女は現れなかった。
時々帰ってきたようだが、リューガ家で寝泊りすることはなかったそうだ。

ケイト様と会わない日が――三ヶ月になろうとしていた。

「あ、アタシの側仕えの人」

急に声を掛けられふり返ると、片腕から血を流して立っているケイト様がいた。

「ケ、ケイト様!」
「驚くな、驚くな。ちょっと斬られただけだから。
 冒険者にとっては日常茶飯事さ」

へらへら、と笑うケイト様に、私は空いた口がふさがらなかった。
だって、普通の女の子だったら笑えない。
こんな痛々しい傷を抱えて、笑っていられるほど、女は強くないはずなのに。

「今すぐ手当ていたしますので、お部屋で待っていてください!」

私は医務室へと走った。
包帯と、痛み止めと、消毒液と。
道具をそろえる指先が震えた。

私は完全に動揺していた。
あんなに血が――どろどろと出て……。

「しっかりしなきゃ!」

言い聞かせて、私はケイト様の部屋に走った。

「お待たせいたしました」

ケイト様はすでに衣服を脱いでおり、止血していた。

「消毒します。痛むと思いますが、我慢してください」


それから私は必死になってケイト様の傷の手当てをした。
ケイト様は額に汗の粒を浮かばせて、私の手当てを静かに受けてくださった。
痛みに音を上げないのが、正直すごいと思った。

根性あるな。
上から目線にもほどがあるが、そう思わずにはいられなかった。


「痛み止めが効くまで時間が掛かると思います。安静にしてくださいませ」
「うん。ありがとう」

私は目を丸めた。
ケイト様も首をかしげた。

「アタシ、なにか変なこと言った?」
「い、いいえ……その」
「変なの」

ケイト様は笑って、それから休まれた。

驚いた。
驚いたまま、私は部屋を後にした。
するとセバスチャンが早足で、私の前に現れた。

「ケイト様が負傷したと」
「私が今、手当てしておきました」
「そうか……迅速な対応だった。ありがとう」

セバスチャンが微笑を浮かべ、ケイト様の部屋から立ち去った。

心臓が、ばくばく言っている。
まさか、主たちに「ありがとう」なんて言われるなんて夢にも思わなかった。
やって当たり前のことをしただけなのに。

その日の夜、私はレムオン様に呼ばれた。
憧れのレムオン様だったが、心は弾まなかった。
「なにかやらかしただろうか」という不安で泣きそうだった。
ノックをし、中に通される。


「お前か」
「な、なんでしょう」
「ケイトの怪我の手当てをしてくれたのだろう。感謝している」
「……私は、当然のことを――」
「ケイトに言えと言われた。兄なのだから、と」

レムオン様が、苦笑された。
この人は、笑わない人だと思っていたけれど。

「あいつはこれからも無茶をして帰って来る。あいつのこと、頼んだぞ」
「は、はい」
「用はそれだけだ。下がっていいぞ」
「はい」

私は破裂せんばかりの心臓を抱えて、部屋を出た。
今日はなんなの?

夢にも思って居なかったことが立て続けに起こっている。

この一件以来、私はケイト様と仲良くなった。
時々レムオン様にもお目にかかるようになった。
セバスチャンに信頼されるようになった。

ケイト様が来てから、他のメイドたちもどこか嬉しそうに働いていた。
私もその一人。

ケイト様は、いつだって、どんなに些細なことにも「ありがとう」と言ってくださった。

もし、ケイト様がリューガ家に来なかったら……私はずっと泣きながら仕事をしていたのかもしれない。
感謝されるわけでもない仕事をどうして私が。
なんて、ひがみながら仕事をしていたかもしれない。

「どうしたの?」

ケイト様が顔を上げた。

「いいえ」
「でも嬉しそうじゃない」
「……ケイト様と出会えて幸せだな、と思っていたんです」
「また、そうやって」

照れたように笑うケイト様に、私は微笑んだ。

「本心ですよ」




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*Comment

こんばんわ♪ 

こんばんわ♪

ケイトが上司だったら幸せだろうなぁ・・w
誰にでも気さくなケイトは、やっぱり使用人達にも人気ありますね。
良い意味で貴族らしく無いからこそ、高いカリスマ性を感じます。
記事を拝見する度に、変わっていくレムオンも何だか可愛いですw


  • posted by kaorin114 
  • URL 
  • 2012.12/22 19:41分 
  • [Edit]

Re: kaorin114さんへ 

こんばんわ♪
訪問&コメントありがとうございます><

生粋の貴族にはない価値観が、農民育ちのケイトにはあると思います。
だからこそ、地位の低い者たちの心に寄り添えるのでしょう^^
その分、貴族には寄り添えないという弱点もありますけどね。
ゆえにケイトにとってレムオンは、特別……なんて、なんて!!(*ノェノ)キャー

レムオンが変っていくというか、キャラが崩壊しつつある気がしてなりませんw
エルファスもだいぶ崩壊させてる気がします(°◇°;)
大丈夫なんだろうか(笑)
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2012.12/22 20:27分 
  • [Edit]

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