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二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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水鏡

神:焼津ノ若銛(やいずの わかもり)
   魂寄せお蛍(たまよせ おけい)

主人公:相模 春(さがみ はる)



『 水鏡 』




夏の盛りを終えた京。
冷涼な風にあおられるお蛍の雨色衣。
「魂寄せ」の名に相応しく、お蛍は「魂」を寄せあの世に連れて行く神である。

今日もまた迷える「魂」を集める為に水辺を歩いていたのだが。

「あ……」

お蛍は立ち止まり、深く頭を垂れた。

「神が、そうた易く頭を下げるものではない」

凛とした声音の主は、相模家の初代当主。
神々の争いに巻き込まれ、朱点童子打倒の宿命を負わされた一族の長である。
人との交わりで子孫を残せない種絶の呪い。
長くても二年間しか生きられない短命の呪い。

二つの呪いを初めに受けたのが、この眼前の女性――――春だった。
表情の乏しい、しかし綺麗な容貌。
短く切りそろえた深緑の髪が、晩夏の風に揺れた。

「お役目、ご苦労様にございます」

春は頷いた。
答えるということは、やはり……。

「舟を出してくれ」

水草揺れる川。ぽぅっと淡い光を放つ蛍が、お蛍の周りに集まる。
お蛍は春を乗せて舟を出した。
静かな夜であった。

春は正座をしたまま、まっすぐ前を見つめていた。

彼女のまとう雰囲気に異変を感じ、お蛍は横目で春を見た。
春の青白い頬に涙が一筋流れた。

「我々を、お恨みでしょうか」

お蛍は訊いた。
春は目を伏せた。

「恨んだところで、なにが変ろうか」

ただ一つ、静かな答え。しかし、なんと重い一言であろう。

「余計なお世話かもしれませんが……」

お蛍は舟を止め、水面を手で掻いた。
波紋が広がりを見せたかと思えば、水面の揺らめきがピタリと止まり。
鏡のようになった。
そこに、見覚えのある男の姿があった。

「若銛様……」

お蛍はわきに下がり、明後日の方を見た。
春はお蛍の意図を察し、黙って若銛を見下ろした。
褐色の肌を持ち、顔に紺の文様が入った、男神。
人と交われぬ春にとって、初めて交わった男――夫であった。

「春、達者か」

表情の乏しかった春が面食らって、それから笑った。

「死に申した」

若銛は快活に笑った。

「知っておる。だが、今の流れでは違うだろう」
「それは若銛様が悪いのでしょう」
「その物怖じせぬ態度。堅物を突き通したか、お主は」
「虚勢を張っていただけかと思っていたのですが、どうやら性分のようでした」
「まったく逞しい女であったことよ」

春と若銛はひとしきり笑い合って、それから急に沈黙した。

水鏡が、一粒の雫によって揺れた。

「一族を思えば悔いと恨み心はございます。
 されど、己の生をふり返ると、悔いなどございません」

春は、困惑と悲しみに染まった表情を見せた。

「私は、人間としては生きられなかった。
 しかし、一人の女として生きられました。
 あなた様を神と知りつつも、恋い慕いました」

バシャッと、春が水を掻く音がした。
若銛はその手に触れるように、手を伸ばしてきた。
触れられるはずがないのに。
それは春への労いと愛情であった。

お蛍はちらりと横を窺った。
春の言葉は、お蛍に対する答えだったのかもしれない。
だが、これは若銛にだけ吐露したのだ。
自分はそれを偶然聞いただけに過ぎないのだろう。

「ありがとう、春」
「どうか、我が一族を、私たちの息子をお守りください」
「ああ。必ず、きっとだ」

水鏡は消え、お蛍は舟を進めた。
隣にいたはずの春は消えていた。
お蛍の傍に落ち着いた蛍は、静かに呟いた。

「面倒をかけた。ありがとう」
「……はい」

 
ありがとうございました&お疲れ様でした
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