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第三回 再会

夏の夜のことだった。

やけに騒がしい。

リューガ家執事・セバスチャンは灯火を持ったまま、玄関の所で立ち止まった。

リューガ家の扉を開け、駆け寄ってくるメイドを手で制し、おぼつかない足取りで歩いてくる人影。
レムオンかと思ったがそれにしては小さい。

よたたっ……。

力なく体が揺らいだ。
思わず手を伸ばし、片腕で支えた。
薄明かりに浮かび上がる顔。

「ケイト様……」

セバスチャンは表情を険しくした。
ケイトはか細い息でセバスチャンの腕にもたれた。

帰ってきた初日はたいてい顔色が悪い。日に焼けているため、青白いというより、土け色だった。
だが今日は、それを差し引いてもあんまりな色をしていた。

腫れが引き始めたような、青紫色の打撲跡。
包帯が巻かれた右腕。
妙な羽のついた――首輪と言っても過言ではない――首飾り。
手負いの動物のようなケイトの姿に、セバスチャンは胸をざわつかせた。
重く垂れ下がる剣を外し、メイドに手渡す。

「ケイト様の寝室へ」
「はい」

メイドが下がったのを機に、セバスチャンは尋ねた。

「なにが、あったのですか……」
「……レムオンは……?」
「もうすぐ帰ってくるかと」
「そう……。じゃあ、行くわ」
「なっ!」

セバスチャンは咄嗟にケイトの腕を掴んで止めた。

レムオンには弱っている姿を見せたくない。
それが彼女の行動から分かる、彼女にとっての不文律だった。

ケイトの必死さはいつも加減を知らなくて、ハラハラさせられる。
こんな思いをするのはきっと自分くらいだろう。

執事セバスチャンとは、リューガ家に尽くすだけの者。
その認識がケイトの隙だった。

「離して……今日は、ダメなんだ」
「事情をお話くださるまでこの家からは出しません」
「でも、レムオンが帰って来る……」
「それでは私の部屋でおやすみになってください。レムオン様が私の部屋に来ることはありませんから」

なおも言い募ろうと口を開くケイト。
セバスチャンは問答無用でケイトを抱き上げると、部屋へと運んだ。
この行為に下心はないと分かっているケイトはじっとしていた。

ゆっくりとベッドに寝かせると、ケイトの硬かった表情がかすかに和らいだ。
運んできた水を飲めば、よりいっそう柔らかな表情を浮かべた。

水がこんなに甘いなんて思わなかった。

そんなことを言うものだから、きっとこの子は飢えているのだろうと思った。
身体も、心も。

「アンティノにはめられた……」

唐突にケイトは呟いた。
アンティノ――――なんとか記憶を掘り起こして、あぁ、と頷いた。
悪名高いリベルダムの有力商人の名。

「また厄介なことに巻き込まれましたね」

容赦のない呆れ返った一言に、ケイトはひるんだ。

「その首のものはなんですか?」
「ああ、これ?」

ケイトは羽を指先でつまむ。

「夢魔の羽って言うんだって。寝ている間にリベルダムの闘技場に飛ばされるんだ。
 リベルダム商人……ロティ殺しを疑われてんだ、アタシ」

彼女は疲れた目をして、ふっと鼻で笑った。

闘技場……それがどんな意味をもって呟かれたのか、容易に想像できた。

廊下が騒がしくなり始め、レムオンが帰ってきたのだとわかった。
ケイトを寝かせたまま、セバスチャンは廊下へ出た。

「お帰りなさいませ」
「ああ……」

主人も主人で、疲れきった顔色をしていた。
ロストールとディンガルの戦争で政務が慌しいのだろう。
ケイトのことを話そうにも、それどころでもなさそうだった。
言うべきか、言わざるべきか。
悩んで――――やめた。

「お食事は」
「部屋に頼む」
「かしこまりました」

メイドに一切のことを任せ、再び部屋へ戻る。
ケイトは眠たそうに目を瞬き、やんわりと笑った。

「ありがとう」

言いようのない、消化しきれない感情が沸いた。
後ろめたいような、気まずいような、しこりを残した感情が。

けれど、ケイトはただ嬉しそうに笑って、セバスチャンにあることを頼んだ。

「剣を、持ってきて」
「は?」
「今日が、飛ばされる日なんだ。剣を抱いて眠らないと、落ち着かない……」
「かしこまりました」

剣を持ってくると、ケイトに手渡し、とにかく今は眠るように言った。
ケイトは頷くなり数分とも経たずに眠り込んだ。
それほどまでに疲れていたのか。


ベッド脇に椅子を用意し、座ったままケイトを眺める。
どれほど時間が経っただろうか。

突然ケイトの首飾りが光り、彼女の小さな体がやわらかな光に包まれた。

「ケイト様!」

そんな時、控えめなノックが部屋に響いた。

「ケイト?」

レムオンは勝手に開けるなり、ケイトの異様な姿を見て飛び込んできた。

「ケイト!?」

ゆっくりと目を開けて、レムオンを認めると。
かすかに笑ったようだった。
幻かもしれないけれど。

行ってきます。

そう言った気がした。
そのままケイトは光に包まれて消えた。



*   *   *   *   *   *   *


一ヵ月後。

昼間にケイトは帰ってきた。
またあの顔色の悪さを抱えて。

「ケイト様……」

ケイトはふわっと笑った。

「ダメね。気付かないなんて」
「え? あ……」

セバスチャンは目を細めた。
ケイトの首にあった首飾りは消えていた。
思わず、無礼とは知っていたが、あの日消え去った体温を確かめずにはいられなくて。
抱きしめた。

そこに下心があるとは思っていないケイトは、大人しくセバスチャンの腕の中で目をつぶった。

「生きて帰って来れるなんて思わなかった」
「お帰りなさいませ、ケイト様」

ケイトは笑ったようだった。





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*Comment

こんばんわ♪ 

こんばんわ♪

クリュセイス関連の闘技場イベントとお話が上手く噛み合っていて
セバスチャンに超感情移入しました~(ノ´∀`*)

レムオンに知らせるのをやめた・・・って言う流れが深いですね・・
戦争中のレムオンの心中を思うと、ロストールの今後より
レムオンの今後の方が心配になります・・(´・ω・`)
最終話辺りしか拝見していないので、続きが凄く楽しみです♪

  • posted by kaorin114 
  • URL 
  • 2012.12/15 19:46分 
  • [Edit]

Re: こんばんわ♪ 

こんばんは^^
いつもコメントありがとうございます。

> クリュセイス関連の闘技場イベントとお話が上手く噛み合っていて
> セバスチャンに超感情移入しました~(ノ´∀`*)
闘技場に飛ばされるのが嫌で、ぎりぎりまで宿屋に泊まらなかったことがありまして。
それを元にお話を作ったらこうなりました。
セバスチャンをメインに書きたいなぁ、っと思ったのもきっかけの一つですね^^

> レムオンに知らせるのをやめた・・・って言う流れが深いですね・・
> 戦争中のレムオンの心中を思うと、ロストールの今後より
> レムオンの今後の方が心配になります・・(´・ω・`)
セバスチャンは、後半になるほどレムオンを心配してますからね。
主を思いやる忠臣。そんなイメージがセバスチャンにはあります。
レムオンがダルケニスだと知っても、セバスチャンはレムオンに尽くしそう(笑)

> 最終話辺りしか拝見していないので、続きが凄く楽しみです♪
いつも読んでくださりありがとうございます!
またリューガ家編が出来ましたら、読んでやってください♪
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2012.12/15 22:37分 
  • [Edit]

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