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状態異常シリーズ:混乱

レムオンはティアナの部屋に訪れていた。
夏が顔を出し始めた晩春のことだった。

春の陽光が射し込む部屋は温かく、心地よい。
これほどまでに心が穏やかになるのは春の暖かさだけではない。
ティアナがいるからだ。
たとえ政敵エリス王妃の娘だとしても、この想いは消えない。
この微笑みを、今この時間だけ独占しているという優越感と喜び。

ゆっくりと流れていく時間。
鳥のさえずりと、紅茶の香り。談笑とともにこぼれる、ティアナの愛らしい声。
ティアナの、生まれつきやわらかい色をした髪が陽射しに輝く。
ずっと続けばいいのに、と心の中でひとりごちたときだった――――。

せわしないノックと兵士の声。
ティアナは驚いたように、外の者に声をかけた。

「何事ですか?」
「レムオン様、至急リューガ家へお戻りを!!」
「なにかあったのか」

レムオンはやれやれと腰を上げた。
しかし、呆れたその表情は、次の一言で強張った。

「ケイト様が――――」



ケイトが負傷した。
その知らせを聞いた瞬間、レムオンはティアナに深々と礼をし退室した。
眉間のしわを深め、不機嫌そうに廊下を大またで歩く。
王宮内を走るようなことはしない。だが、一度出てしまえば話は別だ。

レムオンは従者があらかじめ用意しておいた馬車に駆け寄り、乗り込んだ。
そこにはセバスチャンが同乗していた。

「お前……」

セバスチャンが静かに「出せ」と言うと、馬のせわしない蹄の音が響いた。
馬車に揺られながら、レムオンは深いため息をついた。

「ケイトの容態は?」
「熱を出して寝込んでおります」
「だったら薬で治るだろう。リューガ家がその程度で慌ててどうする」
「……レムオン様の名前をずっと呼んでおりました」
「そう、か」

思わず、レムオンはセバスチャンを見た。
いつもの柔和なセバスチャンが硬い表情で前を見つめていた。
なにがあった。なにがあったんだろう。
いくら考えを巡らせようと答えは出なかったけれど。

リューガ家の邸宅に着くなり、メイドたちの悲鳴が聞こえてきた。
セバスチャンは顔色を変え屋敷に走っていく。
ゆったりと馬車を降り、レムオンは頭を振った。

(やれやれ……今度はなんだ……)

おろおろと戸惑う従者が、レムオンの顔色を伺いつつ扉を開けた。
まず最初に飛び込んできた光景は、メイドたちが悲鳴を上げながら逃げ回るところ。
次に、屋敷内で剣を抜き放った守衛たち。
そして最後に、白いワンピース姿で剣をひきずるケイトの姿だった。
青白い顔。充血した目。
熱を出してふらふらなくせに、裸足のまましっかりと立っていた。

「レ、レムオン様! 我々では太刀打ちできません!!」
「どういうことだ? 俺は負傷と聞いていたがピンピンしているじゃないか」

言いながら剣を抜き放つと、ケイトは視点の定まらない目でキョロキョロと辺りをうかがっている。

「おいセバスチャン。本当に熱を出しただけだったのか?」
「申しわけございません、レムオン様。
 運ばれてきたときは熱で意識を失っていたのですが、
 目覚めてからはこうなってしまっていて。
 どうやら混乱状態にあるようです」
「冷静な分析はいい」
「ですが、ずっとレムオン様のお名前だけは呼ばれておりました……」

その瞬間、ケイトはぴくっと反応した。

「レム、オン?」
「ここだ。ケイト」
「レムオン、レムオンッ……レムオン!!」

ぺた、ぺた……ケイトの足音が響く。
ぎぃぃ、と耳障りな音を立てて切先が床を削る。

ぺた、ぺた、ぺたぺたぺたた……っ。

ケイトは剣を構えレムオンへと駆け出した。
レムオンは易々とケイトの剣を受け止め、血走った双眸を見つめた。

「どうした? なにか含むところでもあるんだろう。
 どうせ治すなら毒を吐き出してからにしろ」
「レムオンッ、レムオン! 許さない、許さない!」

剣を跳ね上げ間合いを取る。

「レムオン様!」

セバスチャンがガラスの小瓶を放り投げ、レムオンはキャッチする。
なにも投げなくても、という愚痴はさておき。
ケイトの連撃に耐えつつレムオンは訴えかける。

「なにが気に入らない。許さない、とはなんのことだ?」

一切の反応を見せず、ケイトはひたすら剣を振り上げる。
ダメか。と落胆しレムオンは片手でコルクを抜く。
瓶の中身を一気にあおると、ケイトの間合いに踏み込み、頭を引き寄せた。
ケイトに深い口付けをするとともに、薬を飲ませる。

「きゃあぁ……」とメイドたちが顔を赤らめて、惚けた。
ケイトの口の端からこぼれる薬。
目尻から涙が伝った。

唇を離すと、ケイトはレムオンをじっと見つめた。

「てぃあ、な」
「うん?」
「ばっかり、やだよ……アタシも……」

かくん、とケイトの頭が落ち、レムオンはそっとケイトの体を抱き上げた。
熱い。こんなにも熱をはらんでいる身体で、剣を振り回していたのか。
レムオンは目を伏せた。

「セバスチャン、解熱用の薬を持ってこい。それから、濡れタオルも」
「かしこまりました」

ケイトを寝室に寝かせ、仕事に戻った。
夜も深まり再びケイトの元へ訪れると、ケイトは寝苦しそうに寝返りをうっていた。

「あ、お兄様だ~。お昼はご迷惑をおかけしましたー」
「詫びるつもりなんてないんだろ」

すぱんっ、とレムオンの掌がケイトの頭へと飛ぶ。
「ったあ!!」と大げさに痛がって、ケイトはレムオンを睨んだ。

「病人には優しくしろー」
「充分優しくしてやっただろう」
「チッ。あ~体だるい」
「寝ろ」
「うっさいな。今から寝るよー」

拗ねた顔で背を向けて眠るケイト。
レムオンはベッドに腰を落とし、そっと呟いた。

「顔赤くなってるの、隠せてないぞ」

ケイトは真っ赤な顔をして、冷たい指先を唇に当てた。

初めてだったんだから。

怒ったような、困ったような弱々しい声。
レムオンのなかでなにかが動いた気がした。
まだ気付いてはいけない。
まだ、もう少しだけ。
ティアナだけを想っていたい。

――――ずるい俺を許してくれ。







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