FC2ブログ

すっごくRPG!!

二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

手のかかる妹

スラム街の奥地にある酒場。
今日もマスターは多くの冒険者と談笑し、噂や情報を教えていた。
冒険者たちも宿屋に戻り、人がいなくなったところで店を閉めようかと思っていた頃。
唐突に、しかし、力なく酒場の扉は開けられた。

「おや、ゼネテスの旦那じゃないかい。今日は野望用だと……」

マスターは言葉を切り、すぐさま紅茶を出す準備に取り掛かった。

ドレスではなく貴族の礼服を身につけたケイトが、ゼネテスに支えられて歩いてきた。
泣きはらした目で床を見つめ、生気の感じられない表情をしていた。
つい最近まで元気よくあちこちを駆け回っていた子だったのに。

「どうしたんだい? ケイト」
「うん? あ……マスター」
「どこに連れられてきたかも分からなかったのか」
「アタシ、頭いっちゃってるから」

ケイトのあんまりな姿に、ゼネテスとマスターは顔を見合わせるしかなかった。
ことん。
食器が置かれた音がしてケイトは重そうに首をもたげた。

「いつもの紅茶と、こっちはチョコレートだ」
「どうしたのこれ」
「ちょっと知り合いに、な。おいしいぞ」
「ありがとう。ねぇ、隣の部屋、空いてるよね」
「え? ああ」

ケイトはカップと、チョコレートが乗る小皿を持って、奥の小さな部屋に移動した。

「どうしたんだ? いったい」

ケイトの背中を見送りながら、マスターはゼネテスに尋ねた。
ゼネテスは「さあなぁ」と重いため息をついた。
マスターは気を利かせてゼネテスに一杯の酒を注ぎ、手渡した。

「悪いな」

ゼネテスはグラスを片手に移動した。
ケイトは壁にもたれながらチョコレートを口に含み、なめていた。

「どうだ、美味いか?」
「ん。甘い」
「そりゃあ、まあな」

なめながらケイトは涙をこぼした。

「もし農民のままだったら、一生食べる機会はなかったな」

鼻をすすり、手の甲で無理やり目元を拭う。
それでも涙はとめどなく流れ、顎を伝い落ちた。
その姿が痛々しくて、すぐにでも抱きしめて慰めてやりたかった。
だが、それは自分の仕事じゃない。
ゼネテスは酒を含みながらケイトを見守った。

「……うっ……っ……」
「なにかあったのか?」
「ティアナも、アトレイアも、レムオンもアンタも、みんな嫌な奴だったら良かったんだ」
「どうして」
「そしたら、アンタたちのことなんとも思わずに憎めたんだ」

ケイトは膝を抱えて、顔を埋めた。

「どうして優しいの。どうしてアタシに期待するの。どうしてアタシなんかを必要とするの。
 アタシはアンタたちのことを何度も恨んだのに……」
「ケイト」
「ごめん……ごめん。憎んで、ごめん……あなたたちには関係ないのに……」
「大丈夫だ。大丈夫なんだぞ、ケイト。今は俺たちを好いてくれてるじゃねーか。
 俺を頼ってくれてるじゃねーか。それで充分だ。な?」

ゼネテスの慰めにいっそう心を痛めるケイト。
もっと近くに座って、触れて、慰めてやりたいのに、これ以上はダメだと心を抑える。
自分の仕事ではない。
たとえ泣き止ませたところで、ケイトが心から元気になることはいのだ。
ケイトを癒せるのはアイツしかいない。
甘やかしも、同情もみせない、レムオンしか……。

そのときだった。
マスターが驚きの声を上げ、「酒はいらん」と静かに言い捨てる声がした。

「やっとお出ましか」
「……今の」

どこか不機嫌そうに顔をしかめて現れたレムオンは、部屋の入り口の壁によりかかり、ケイトを見下ろした。

「俺が、こんな場所に来るとは思わなかったか?
 そうだろうな。俺もこんなところには来たくなかったさ」
「……じゃあ来んなよ」
「ああ。さっさと帰るさ――――お前を連れてな」

レムオンは腕を伸ばし、ケイトの首根っこを掴みあげた。

「ぐっ、苦しっ」
「嫌だったらさっさと背を伸ばして立て。甘えは許さん」

けほっ、けほっと忙(せわ)しなく咳き込み、ケイトはレムオンをねめつけた。

「なんなの? 喧嘩売ってんの?」
「酒も呑んでないくせに絡むな。面倒くさい」
「なにを」
「いいから帰るぞ。まったく、お前は女なのだからこんなところに入り浸るな」
「言いたこと言いやがって」
「ケイト。今日は大人しく帰るんだ」

ゼネテスが諌めた。
ケイトは戸惑い、歯切れ悪く言葉をつむいだ。

「なんで、アンタまで」
「今日は疲れただろ。帰ってゆっくりしろ。な?」
「でも」
「良い子だから、聞き分けろ」

ゼネテスの大きな手で頭を撫でられ、それこそ子供のようにケイトはうなだれた。
しょうがない、とゼネテスは肩をすくめケイトの口にチョコレートを一欠けら、放りこむ。

「またな」
「……うん」

レムオンの手を引かれて酒場を後にする姿は、まるで本当の兄妹のようで笑えた。

*   *   *   *   *   *

レムオンはケイトの手を繋ぎながら、リューガ家への帰路を辿る。
星空を見上げながら歩くケイトを叱咤し、噛み付いてきたら更に説教をした。

「ティアナがひどく心配していた。明日、ティアナに謝るんだ」
「……やだ。……なんか、やだ」
「俺も一緒に行ってやるから」
「絶対?」
「ああ。妹の不始末は兄が拭わなければならないからな」

へへっ、と笑うケイト。
酔っているのかと疑うくらい能天気に笑う奴だった。

「なあ」
「ん?」
「……謝るつもりは毛頭ない。だが」
「なにさ、もったいぶって」
「明日ノーブルに行くか?」
「え……」
「領主の視察という名目で、俺が行く。お前は兵士の格好で俺の護衛をしろ。そのついでに、お前の見たい場所に連れて行ってやる」

急に手を引かれ、レムオンは鬱陶しそうに振り返った。
ケイトは立ち尽くしていた。
ポロポロと涙をこぼし、ゆっくりとレムオンに近づき、抱きしめた。
レムオンは仕方ないという調子でケイトの背中を撫でた。

「心の目で見るんじゃなくて、自分の目で見て来い。弟も一緒に連れて行け」
「いいの?」
「くどいぞ」
「あり、がと……」
「その代わり、今日みたいなことはするなよ。肝が冷える」
「うん。うん……」
「帰るぞ」

レムオンは再びケイトの手を引き、歩き出す。
家に着くまでケイトは泣きながら「ごめんなさい」と「ありがとう」を繰り返した。
手の掛かる妹だ。と嘆きながらもレムオンは口元を綻ばせた。



ありがとうございました&お疲れ様でした
  クリックしてくださると励みになります!!

ブログトップへ戻る
レムオン編作品リンクへ
スポンサーサイト

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

カウンター

ブログランキング

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ  

FC2Blog Ranking

ワンクリックで応援お願いします!

最新記事

プロフィール

デジャヴ

Author:デジャヴ


二次創作小説・オリジナルファンタジー小説を書いています。訪問して下さった皆様に少しでも楽しんでいただけると幸いです。

恋愛小説サイト『恋砂糖*ひと匙』も運営中


【補足と注意】

・過度な性描写・暴力シーンはありません。

・原作キャラでの同性愛は一切書きません。

・コメント、感想はありがたく頂戴いたします。誹謗中傷やマナーのないコメントは受け付けません。

・当ブログを利用するにあたり、一切の責任は負いかねます。あらかじめご了承ください。

・小説、イラストともに転載・複写×
著作権は放棄しておりません!

以上の点をご理解いただけますことを心よりお願い申し上げます。まだまだ不慣れですが、温かく見守っていただけると幸いです。

右サイドメニュー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。