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すっごくRPG!!

二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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空中庭園

ケイトはパーティーを抜け出し、王城の空中庭園へとやってきた。
石垣の縁に腰を下ろして地上を眺める。
爽涼とした風がケイトの髪を巻き上げ、ケイトは髪にそっと手を添えた。
険しい横顔。
見つめる先はノーブルがある。見えない、立ち帰ることも許されない故郷(ふるさと)
こんなことに、なるはずじゃなかったのに……。
心はいつだって故郷にある。あの黄金色に輝く場所に。

「こんなところに居たのか。まったく……。散々探し回ったのだぞ」

振り向かずとも分かる声の主。
ケイトは首を巡らせた。

「踊らなくていいの? ティアナ姫様と」
「エリスの前で踊れるか。余計なことを考えやがって」
「本当に余計?」
「なんだと」

レムオンは片眉を吊り上げ、怪訝そうにする。
ケイトは「ふっ」と鼻で笑うと両手を組み頬に寄せて、目をパチパチとまたたく。

「今日のお兄様、眉間にしわができてなくて、とっても素敵!
 あっ、ティアナ様と談笑できたものね! きゃはっ」
「乗らないぞ。いちいちお前の軽口に付き合ってられるか」
「ご機嫌がよろしいようで。いつもそれくらい心が広かったらいいのにね」

レムオンは冷たくあしらい、ケイトの隣に座った。
真っ暗でなにも見えない景色がそんなに面白いか、と呟く。
ケイトは「ちっ、ちっ、ちっ」と舌を打ち、人差し指を振った。

「見えないのかね? あの広大に広がる黄金色の畑が」
「見えないな」
「そうでしょう。そうでしょうとも。心の目で見るのですから!」
「ケイト」
「いやあ、平穏なノーブルが見えます、見えますぞ!」
「ケイト!」

レムオンは苛立たしげにケイトの肩を掴んだ。
だが、レムオンが口を開きかけたところでティアナが現れた。
ヒールが石畳を叩く音とともに、幸福をもたらす笑みを振りまき王女が駆け寄る。

「あ! お二人ともこんなところに! もう、ティアナを置いていくなんてひどいですわ」

ドレスをちょこんとつまみ、走り寄ってくる。
レムオンは立ち上がり、ティアナのそばについた。
ケイトは片足を立て膝に顔を寝かせた格好で、そのやり取りを見つめていた。

「走るな。国の王女が転んでは目も当てられないのだから」
「こ・け・ま・せ・ん!」
「どうだか」
「もう。いっつもいじわるなんですから」

チリッと胸の奥がうずいた。
貴族の馴れ合いなんて見たくもなかった。
農民が汗水たらして、毎日の生活に苦労して生きているというのに、よく笑っていられる。
アトレイアにあんな顔をさせたのも、スラムで少女を泣かせたのも、ノーブルを苦しめたのも。
己の保身のために生きる、貴族のせい。
全部、全部気に入らない。

その貴族の一員になった自分が、貴族を恨むことも許されない現実が、一番――――。

気に入らない。

ティアナは二人にここへ来た理由を話していたが、ケイトは聞き流した。
レムオンは丁寧に、優しく対応している。
嬉しそうに笑いながら。

「ケイト、様?」
「なに?」

ケイトの声の硬さに、ティアナは困惑した。
レムオンの咎める視線を無視して、立ち上がる。

「ああ。ごめんなさい、お兄様? お邪魔だったみたいね」
「ケイト」

パチンッ――――。

「触らないで」

レムオンは伸ばした手を引っ込め、ケイトを静かに見つめた。
ばつ悪そうに顔を歪め、ケイトは踵を返した。

「ごめん、ちょっと気が立ってるんだ」
「ケイト様!」
「やめるんだ、ティアナ。ケイトは今」

ティアナはケイトの腕を取り、行かせなかった。
訴えるような、切なげな目でケイトを見据える。

「いやです。行かせません。このままじゃ、次に会うとき気まずいじゃないですか」
「…………」
「ティアナがなにかしたなら、気分を害されたなら謝ります。
 だから、だからそんな風に黙って行かないでください」
「大丈夫。今だけだから。次に会うときは、ちゃんと接するから」
「ケイト様」
「分かったよ、降参」

ケイトは暗鬱とした顔を上げ、暗闇のなかを指差した。
ティアナはその方角へと顔を向けた。
いっそ全部、バラしてしまおうか。
彼女に、太陽のように微笑む彼女に現実を教えてやろうか。
ケイトがどれほど貴族を憎んでいるかを。

(大っ嫌いって、言ってしまおうか)

「あの向こうに、ノーブルがあるんだ」
「ケイトやめろ」
「あの村はね」
「ケイ――――」
「……っ。きれな、畑があるんだ。
 夕日に照らされた、黄金色に輝く、きれいな大地が。
 いつか、見に」

ケイトは堪えきれず涙を流し、その場を駆け去った。
出口のところでゼネテスにぶつかり、ゼネテスは顔をしかめた。
ゼネテスはケイトの状態からなにかを悟り、腕の中に収めた。

「ティアナ。王妃がお呼びだ」
「はい、ただいま……参ります」
「レムオン」
「なんだ?」
「ケイト、借りるぞ」
「……ああ」

ゼネテスは軽々とケイトを抱き上げ、空中庭園から引き上げた。
ケイトはゼネテスの腕の中で嗚咽をこらえていた。

「アタシ、こんな自分は嫌だ……」
「そうか? 俺は好きだけどな」
「ティアナを傷つけるところだった。レムオンを、裏切るところだった」
「抑えたじゃねーか。それでいいだろ」
「帰りたい。帰りたいよ!」

ケイトはゼネテスの胸に顔を押し付けた。

「早く、ここから逃がして……ゼネテス」

切羽詰まった声に、ゼネテスはため息一つこぼして「わかった」と頷いた。


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*Comment

 

50拍手おめでとうございます!!
拍手してなかったな~~と思い、拍手しました。
舞踏会でトラブルはハレですね。貴族はそういうトラブルに飢えてますからね。
自分に及ぶのは嫌いなくせに、そういうトラブルは大好きですからね。
昼ドラを見る感じで好奇な目で関係ない貴族は見るんでしょうね、、、。。。
・・・なぜか、大人視点になってしまってすいません。
改めて、50拍手おめでとうございます。
読むたびに拍手いたしますね。
  • posted by LandM 
  • URL 
  • 2012.11/21 19:26分 
  • [Edit]

Re: LandMさんへ 

ありがとうございます!!
たくさんの拍手に感激しております。

この物語の舞台であるロストールは貴族と王族の対立があり、
農民などの下層市民はそれに巻き込まれているんです。

ケイトもその一人。
貴族の圧政にあえぐ 故郷の人々を救うために立ち上がるのですが、
故郷に裏切られ、憎き貴族に利用されてしまうのです。
しかし、この事実を口外すれば、罪は自分だけに留まらず故郷の人々にも及ぶ。
ゆえにケイトは、ティアナになにも言うこともできないのです。

ティアナは王女として、何も知らないでは済まされないはずなんですがね。
蝶よ花よと愛でられた彼女は、無邪気にケイトの前で笑うのですから、罪深いなぁと思います。

と語ってしまいましたww

いつもありがとうございます。
またよろしくお願いいたします!!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2012.11/22 21:22分 
  • [Edit]

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