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星の民の少女 (05)

  
  
「それじゃあ、俺はここで失礼するよ」

 カロンはグラスに残る酒を飲み干して、席を立った。
 キッカはカロンと動かないロランドを見比べて、目を瞬いた。どうしてロランドは行かないの、と不思議そうな顔をする。
 ロランドは気付きながらも答えず、静かに酒を口に含んだ。

「またね、キッカ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」

 カロンはロランドを残して食堂を出て行った。
 夜目の利かないロランドを護衛するには、あらかじめ睡眠をとっておく必要がある。とっても、カロンはロランドが眠る前に二時間だけの仮眠だ。ロランドが眠りにつくと、寝ずの番をする。そしてロランドが起きると、カロンはまた二時間だけ仮眠をとる。ここまでの旅はずっとそうしてきた。
 王宮を出てから、カロンの睡眠時間は明らかに少なくなっている。
 酷なことを頼んでいるとは思う。だが、カロンは不平不満を言わずに付いて来てくれた。それに、本当に無理なときは一言あるだろう。

「あの、お兄さんは寝ないの?」
「ああ」
「そう。あ、そうだ、名前! わたし、お兄さんたちの名前聞いてないわ」

 キッカは大仰に声を上げた。
 その反応に対して、ロランドはふっと笑った。

「それでよく俺たちについてきたな。ずいぶん無用心な娘だと、感心していたところだ」
「えへへ……良い人か悪い人か、顔を見ただけで判断できちゃうから、うっかりしてた」
「知らない奴には付いていくな。どんなに口がうまくて、人相の良い相手でもだ」
「はーい」

 キッカは元気よく答えてテーブルに両肘をつくと、顔を乗せて頬杖をついた。

「それでそれで、お兄さんのお名前は?」
「ロランドだ。さっきの連れがカロンだ」
「うん! 覚えたよ、よろしくね」

 ロランドは軽くうなずき、にこにこと笑うキッカを見つめた。
 キッカは星の民のことをあれこれ話した。ロランドはたまに声を出すだけで、ほとんど聞き役立った。
 そして、時間が経ちキッカは眠そうにまぶたを動かしながら、つぶやいた。

「ねぇ、ロランドさん。ロランドさんは、キュラティフの泉ってあると思う?」
「さあな。あれば良いと思っている」
「うん、わたしもあれば良いなって思ってる。わたしの上のお姉ちゃんはね、二番目のお姉ちゃんのために、キュラティフの泉を探しに出たんだ」
「なに?」

 ロランドは片眉を上げる。
 まさか、自分と同じように幻の泉を求める者がいたとは。
 ロランドは興味深そうに話の続きを待った。

「二番目のお姉ちゃん……ジーナの瞳にね、月が現れ始めたの。今は三日月で……一年で満月になるんじゃないかって、ばあやから言われているの。ジーナは、これが星の民の運命だから仕方ないって諦めていたけれど、お姉ちゃんはそんな運命なんて要らないって、泉を求めて出て行った。本当はわたしも一緒に行きたかった。でも、お姉ちゃんとジーナに止められた」
「でも、出てきたんだな」
「うん、こっそりね。きっとみんな心配してるだろうけど、わたしだってジーナのために動きたかった。それに、お姉ちゃんのこともすごく心配だったし」

 キッカは泣きそうな顔で、しかし弱弱しく笑った。
 なにかを堪えるようにずっと笑っていたが、ふっとうつむき、そして涙を落とした。
 ロランドはキッカが話し始めると、ゆっくりと立ち上がった。

「ここまで来るの、ちょっと怖かった。ジーナたちの言う通りだった。でも、戻るのも怖くて……はやく、お姉ちゃんを見つけて……安心したくて……」

 ロランドはキッカの隣に並ぶと、小さな背を優しくなでた。
 キッカは一度ちいさく震え、それから顔を覆って静かに泣き出した。
 少女には過酷な旅だったに違いない。旅の恐怖はオグルだけじゃない。女であるがゆえに、不埒な男や夜盗たちに狙われる危険がある。その恐怖に震えながらも、帰ることはせず、ただひたすら前に進んできた根性は素晴らしいと思った。
 ロランドはキッカが泣き終え、落ち着くまで背中をなで続けた。
 そして、カロンが食堂に戻って来る頃にはロランドの腕の中で眠っていた。

「なにこれ、どうしちゃったの」
「ここまで不安だったのだろう。色々話しているうちに泣き始めたんだ」
「あらま」
「今は泣き疲れて、この有様だ。カロン、宿まで送ってやれ」
「良いんですか? ひとりで大丈夫ですか?」
「お前が戻ってくるまで、部屋にたんとロウソクを置いて明るくしておくさ」
「殿下がそう言うなら、そうしましょうか」

 カロンはすやすやと寝息を立てるキッカを抱き上げて、食堂を出た。
 その背に、ロランドはふと声をかけた。

「なあ、カロン。ものは提案なんだが――」






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*Comment

No title 

訳ありの2人はキュラティフの泉を探し求めていたんですね。
ということは妖精王を見つけて、妖精王に認められなければいけない…。
それにしても、キッカはお姉さんのためにキュラティフの泉を探していましたが、
カロンはどうしてキュラティフの泉が必要なんでしょうか。
また今後の展開を楽しみにしています。
  • posted by Sha-La 
  • URL 
  • 2014.09/10 09:19分 
  • [Edit]

Re: Sha-La さんへ 

コメントありがとうございます。
幻の泉を求めてしまうほどに、
追い詰められている事情が登場人物たちにはあるのです。

ロランドもまた、深い事情があります。
それを今後明かして行きたいと思います。
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2014.09/13 22:32分 
  • [Edit]

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