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すっごくRPG!!

二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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掌編 『冷たい爪』


 夏なのに、私の手は冷たかった。
 もともと体温調節がうまく機能してくれない身体だったけれど、
 今日の身体は、普段より異常だった。

 夏期講習が始まった学習塾の教室は、クーラーが効いていた。
 そのせいだと思っていた。
 それでも、おかしい。
 どうしてだろう。

 長袖の白ブラウスの上に、学校指定の薄手のベストを着ているにも関わらず、
 鳥肌は治まることを知らなかった。
 昼休みが始まるや否や、私は腕をさすって身を縮ませていた。
 いくつか視線を向けられるが、ほとんどの生徒は見てみぬふりをして、昼食に入った。
 塾から出て、外食する者もいる。
 私だってそうしたかった。
 でも、でも。
 寒くて、お腹が痛くて、夏の暑さで体が滅入ってしまって――食欲なんかわかない。
 どうしよう、帰ろうかな。

「く……うぅ……」
「おい、清水。寒いのか? 腕なんかさすって」

 ふと顔をあげると、心配顔の男子が立っていた。
 あまり話したことはない、他校の男子だった。
 苗字は確か「大路」で下の名前は……、名前は。

「おい、レン! 置いてくぞ!」
「先に行ってろ、あとから行くから!!」
「必ず来てよね、王子様!!」
「やめろユウジ、女声とか寒すぎるわっ」

 そうだった。
 レン、花の名前。蓮って書くんだ。
 大路という苗字が浮かんだのも、「王子」の音と似ていて
 よく「王子様」とからかわれている彼を見ていたから。

 ぼんやりと彼を見返していると、その王子様が私の机の前にしゃがんで、
 顔をのぞきこんできた。
 この塾ではきっと一番、王子様フェイスに近い人だろうと思った。
 ちょっと、ちゃらついているけど。

「顔色悪いな。でもここ、あんまりクーラーの風当たんなくね?」

 王子様は手をかざして、クーラーから流れてくる風を探した。
 小首をかしげてもう一度、私を見た。

「顔色、悪いな。相当、具合悪いの」
「……どうにかなりそう」
「外に出たら少しはマシかもよ。受験ってだけで、気が張ってんのかもしんねーじゃん?」
「……そう、ね」

 あいまいな答えしか返せない自分が恥ずかしい。
 彼はわかってない。
 私がこの塾に通って、一度だって人とつるんでいないことを。
 苦手なのだ。好きでもない人間のそばにいるのが。
 しんどくて仕方のないことだった。
 
「清水」
「なに?」
「今、食べられるものってなに」

 あまりの唐突さに、一瞬呆けてしまった。

「は? いや、その……、ちょっと受け付けない」
「えーマジで。冷たいもの、はダメか。寒いんだもんなぁ」
「そうね」
「てか考えてたら時間なくなるじゃん。歩けるか、清水」
「え?」

 彼はすっと立ち上がった。
 大きな手が伸びてきて、私の手のひらにのせてきた。

「きゃっ、ちょっと?!」
「冷った! マジでやばくね? とりあえず外に出るぞ」
「なんで急にっ」
「リフレッシュしたら気分も良くなるかもしんねーじゃん? 行こうぜ、外に」

 問答無用で手を引かれ、よろけるように立ち上がった。
 にっと歯を見せて笑う彼に、私は不愉快な気持ちになった。
 胸が粟立つように震えて不快だ。
 余計なお世話だと叫びたかったけれど、私はこの手を振り払うことができなかった。

「冷たいな、爪。清水には悪いけど、ひやっこくて気持ちいー」

 目を細めて、彼はそう言った。
 夏なのに真っ白になっていた私の爪を、彼の柔らかな手のひらが包み込んでくる。
 軟弱で、ヒステリックで、社交性のかけらもない私に、どうして優しくするのだろう。

「手が熱いわ。熱くて、熱くて……変になりそうよ」

 か細く消えていく私の声に、彼がわずかに反応する。
 ぴくりと動いた彼の指先。
 不思議に思って目を上げると、彼の耳が少しだけ赤くなっていた。

「ねぇ?」
「俺のがおかしくなりそう。……すんげー破壊力……純粋な子ってこえー」
「えっと、最後の方が聞き取れないんだけど」
「むしろ聞かなくていいから」

 そういって彼は私の手を、少しだけ強く握った。
 胸が締め付けられるような不快感に、私は顔をしかめる。
 不快なのに、ぞわってして胸騒ぎがするのに、どうして手を払えないんだろう。
 息がつまってさっきより具合が悪くなっている気がする。
 そう思うのに、そう感じるのに。
 青白く冷たかった爪は、ほんのりピンクに色づき生ぬるい熱を帯びていた。


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*Comment

新作SSヾ(*´∀`*)ノ 

デジャヴさんの新作恋愛SSキタ━(゚∀゚)━!
純粋(鈍感?)な女の子と王子様。
クーラーの効いた部屋のキンとした冷たさ、
冷たくなった手を包む王子様の手の温かさ、
そういうのが伝わってくる描写がさすがです。
寒い夏ですが、二人に受験合格も合わせて
素敵な春がやってきますように♪
  • posted by Sha-La 
  • URL 
  • 2014.06/14 06:59分 
  • [Edit]

 

おお~帰ってきましたね~Welcome back!!

丁度夏も着たので夏物ですねー。
ヒンヤリお手手は確かにキモチいいかも☆
また小さな春が訪れますように~♪

  • posted by たけ○ふぁぁぁむ 
  • URL 
  • 2014.06/14 15:31分 
  • [Edit]

Re:Sha-La さんへ 

コメントありがとうございます^^
チャラ男だけど真面目で優しい人、を描きたかったんです(笑)
俺様系も描きたいんですが、これがまた恥ずかしくてw
読むのは平気なんですが書くとなると、やたら恥ずかしいです。

この作品を書いたきっかけは…もう思い出せませんw
なんで書いたんだっけかな。
確か、すごく暑い日で、クーラーほしいなぁ。って考えていて(北国の我が家にクーラーはありませんww)
それで書いた気がしないでもないです。

楽しんでいただけたら幸いです><
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2014.07/08 14:24分 
  • [Edit]

Re: たけ○ふぁぁぁむ さんへ 

> おお~帰ってきましたね~Welcome back!!
ご無沙汰しておりますっ!!
いつもコメントを残して頂き、ありがとうございますっ><
それなのに返すのが遅くなり申し訳ないです!
かくなる上は、この腹を切――っ

夏物ですよ~。
ホラーの季節なのに、毎年やる怪談番組っておもんないんですよねぇ。
この映像、去年も見たってやつばっかりです。
ホラーも書きたいなぁ。あ、書こうかなww
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2014.07/08 14:27分 
  • [Edit]

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