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夏のスズラン 02

 次の日曜日のことだった。薄いカーテンから差し込む朝日は眩しく、気だるい暑さをはらんでいた。

「はあ……」

 七時半に目が覚めたひかりは、布団のなかで携帯をもてあそび、重いため息をついた。月曜日からずっと悩んでいたこと。毎週日曜日は彼と会う約束をしている。デート半分受験勉強を教えてもらうのが、半分。彼が卒業してから毎週日曜日が楽しみで仕方なかった。

(今日は、会いたくない)

 枕に顔を埋めて、また重いため息をついた。
 髪を切ったことについては、清次郎は「可愛い」「似合っている」と確かに言ってくれた。
 嬉しかったし、気恥ずかしかった。
 だけど――それだけだった。欲しかったのは言葉だけじゃない。
 瞳の奥がじんわりと熱くなって、ひどく滅入った。もう何度泣いたことだろう。

 オープンキャンパスに行って女子大生たちの大人びた姿を見てから、情けない気持ちになって仕方がない。
 自分の見た目を思うと、心が苦しくなる。
 髪を切っても結局、子供扱いだった。ひかりが欲しがったのは、可愛いという感想じゃない。
 その先にある大人の世界。
 少女漫画の中で、自分たちと同じ歳の女の子は経験している。非道徳的ではあるけれど、ひかりは密かにその行為に憧れを抱いていた。行為そのものというよりかは、男の人の熱い視線を受け止めたかった。
 衝動的に、ロマンチックに、抱かれたかった。

(なんて……夢みたいなことだって分かっているのに。しかも、雫ちゃんに八つ当たりまでして)

 雫はクールな女の子だった。
 自分に自信があって、何事にも動じない人。自分よりずっと大人に近い存在とさえ思える。
 羨ましかった。大人のようにため息をついて「仕方のない子」と言って笑う、その姿が。
 本当は彼と何があって、どう思ってこんなに滅入っているのか聞いて欲しかった。
 でも、彼女には笑われる気がした。

『本当に好きね、夢物語が』

 そう言われる気がして、怖かった。

「バカみたい」

 濡れる頬を拭かずに、ひかりは携帯のディスプレイを明るくした。
 清次郎に「今日は行けません」とメールで送った。
 すぐに「どうして」と返ってくる。
 返したくても、返せなかった。
 会いたくなくても、会いたかった。

(こんなに良くしてもらって、それでも足りないなんて)

 もっと、もっとと思ってしまう。
 怒られたい。困らせたい。愛されたい。見てもらいたい。

「バカみたい。ほんとに、バカだよ」

 とめどなく流れる涙。こぼれる嗚咽。
 気持ちが揺らいでしまって、どうしようもなかった。
 そのうち手の中で携帯が震えた。
 彼からだった。

「はい」
『もしもし? なにか、あった」
「なにも、ないです」
『ひかり? どうした、どうして泣いてるの』
「なんでも、ないんです」
『俺、なにかした? 寂しく、させた?』

 謝らせたいわけじゃない。
 そんな気持ちにさせたいわけじゃない。
 だけど、知って欲しかった。
 私は泣いているの。あなたのせいで、泣いているんです。そんな気持ちばかり湧いてきてしまう。

『先週の日曜日から変だった。髪のことで、怒った?』

 見透かされている気がした。
 やっぱり自分は子供だ。幼いから、すぐに見透かされる。態度に出てしまうのだ。
 なんて情けないんだろう。
 そう思うと泣けて仕方がなかった。
 耳元の声は優しくて温かいのに、心が満たされない。

『落ち着いたら、また電話して』
「先輩」

 ぷつりと問答無用で電話は切れた。
 呆れられた。
 絶望に似た感情の波が、ひかりの思考を飲み込んだ。
 心が空っぽになって、無意識に指が動いた。

『もしもし? 今何時よ……寝かせてよね』
「雫ちゃん……うう、うぐっ、うああああああん!」
『ちょ、どうしたってのよ! ひかり!? ああもう、すぐ行くから顔洗って待ってなさいよ!』



つづく

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*Comment

先輩素敵。 

分かるような分からないような。
私は一歩先に進むのが怖くて、
19歳で初めて彼氏ができて、ファーストキスが3年後でしたのでw

でも、「あなたのせいで泣いている」ということを知ってもらいたい。
でも、些細なことで落ち込み、くよくよする自分が情けない。
このあたりはすごくリアルに伝わってきます。
そう!そうなのよ!的な。
私も共感してもらえるような小説を書きたいです。10年早い気もします…。
  • posted by Sha-La 
  • URL 
  • 2014.06/13 22:21分 
  • [Edit]

Re: Sha-La さんへ 

コメントありがとうございます♪

Sha-La さんの作品、共感できますよ!
Sha-La さんは登場人物たちの会話で、読み手を引き込むというか。
会話の場面は映像じゃないから、どんな顔で、どんなトーンで話しているか分からないけれど、
きっとこんな風に話しているんだろなって想像しやすいです。
だから、登場人物たちの言葉の奥にある、想いを共感することができます。
私も見習いたいものです…。


知ってほしいのに、知られたくない。
恋をしていると天邪鬼になります。
ようは甘えたいだけなんですよねぇ。笑
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2014.07/08 14:02分 
  • [Edit]

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