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夏のスズラン 01

 
 目に見えてふてくされた顔をしている千里ひかりに、クラスメイトたちは軽く驚いていた。
 あの天然かつ穏やかな千里ひかりが、不機嫌だ。
 受験生になり進学クラスの空気はどこか殺伐としている。そして地上は夏を迎えていた。むっとした空気が漂う教室に苛立つ人は多いだろう。しかしそれを差し置いても、千里ひかりの不機嫌は今まで見たことないほど不機嫌だった。



 昼休み。喧騒に満たされた廊下、教室の出入り口では男女が恋の駆け引きをしている。
 誰と誰が付き合っている、とか。
 お前、誰が好きなの、とか。
 やだ~、うそ~、とか。
 
 千里ひかりの友人、雫(しずく)は教室の出入り口を見ていた。
 耳に届く女子の猫なで声に、鬱陶しそうなため息をこぼしつつ、真向かいに座る千里ひかりへと向き直った。

「ただでさえ暑くて苛つくのに、ああいう声出されるとほんっと……ねぇ、ひかり」
「…………」

 千里ひかりは黙々とお弁当のご飯を口に運び、目の端に険を滲ませている。
 雫はお弁当をそのままに、頬杖をついて千里ひかりを見つめた。
 やれやれ、だ。
 雫は鼻先で息をついて、千里ひかりの髪に目を向ける。
 顎先までの長さで、毛先はくるりと内巻き。普段は見えにくい白い首がときどき顕になって、妙な色気を湛えていた。
 一週間前に、彼女は長かった髪を切った。理由は暑いと勉強に集中できないから、だそうだ。繕うような嘘であると一瞬にして見抜いたが、真相を言い当てるまでもなく。

「イメチェンして、離れてしまった彼を釘付けにした~い」

 教室の出入り口で戯れる女子たちの真似をしながら、雫は千里ひかりに言った。
 当然、彼女は顔をしかめて雫を見返した。

「でも、失敗しましたとさ」
「雫ちゃん」
「ひかりが怒ったところで怖くないわよ。アンタは怒る前に泣くんだから」

 毎週日曜日、千里ひかりは大学生の彼氏と会っている。
 昨日がちょうど日曜。切った髪をお披露目した日だった。
 雫は千里ひかりの彼氏を思い出す。前生徒会長で、銀縁フレームの似合う良い男だった。すっと背筋を伸ばしてまっすぐに前を見て歩く姿が印象的。冷たい雰囲気をまとっていたが、千里ひかりの前では優しい笑みを見せる人だった。人前ではイチャつかないのが好印象で――大事な友人を取られたことは癪だが――千里ひかりに合う人なのかもしれないと認めていた。

「距離が離れたからって、心が離れるわけでもないでしょうに」
「雫ちゃんには分からないよ。高校生って子供なの」

 拗ねたように彼女は口を尖らせた。
 悔しそうに瞳を揺らして、手元を見つめた。

「この前、先輩の大学のオープンキャンパスに行ったの」
「うん」
「一つ、二つしか歳が違わないのに皆大人に見えた。私は制服で、すっぴんで。だけど、大学生は私服で、お化粧して。それに綺麗な人、たくさん居た」
「気のせい」

 千里ひかりは頭を横に振った。

「綺麗な人がたくさん居るなかで、先輩は大学生活を送っているの」

 じゃあ、私服着て化粧してデートすれば良いじゃない。と雫は思ったけれど、そういう問題でもないことを当然分かっていた。自分たちは若い。肌が綺麗ねとか、化粧しなくても良いわね、とか言われるけれど。自分たちにはもう少しだけ大人の要素が必要だった。
 若さって良いわねと言われる。確かにその通りだ。でも、自分たちにあるのは「若さ」と同時に「幼さ」だった。「幼さ」は大人びた格好をしようと、大人のように化粧をしようと、隠しきれなかった。幼さだけは、どうしようもできない。
 そのことを、千里ひかりは痛感してしまったのだ。
 疎ましくもあり、憧れでもある「大学」という空間で。

「それで、髪を切って少しでも気を引こうと?」
「だってそうするしか……なかったんだもの」
「可愛いって言ってもらえたんでしょ」
「うん」
「じゃあなんで不機嫌なのよ」
「それは……。雫ちゃんも彼氏できたら分かるよ」

 涙ぐんで言われても、と雫は息をついた。
 今彼女のなかでは後悔と失望と、期待とがごちゃごちゃになっているのだろう。
 感情の整理がつかない時は、いつもこうやって、瞳を潤ませて何かを必死に耐える顔をするのだ。

「帰りにアイス買ってあげるから」
「うん」

 薬局で売っているアイスはなぜか安い。安いから安っぽい味がするけれど、自分たちはこの安っぽさに満たされている。このヒンヤリとした甘さに幸せを覚える。
 夕方になっても暑くて、腹立たしい。
 でも、暑いけど握ってあげたい手があった。
 バニラ味の棒アイスを食べながら、涙を流す友人の横顔を見る。

「美味しいかい?」
「う、ん……ぐすっ」
「そう」

 言って、雫もアイスを食べた。

『高校生って子供なの』

 千里ひかりの言葉を思い出す。
 甘いはずの味が、少しだけ苦かった。







つづく。

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次へ》夏のスズラン 02

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*Comment

ご無沙汰しております! 

続編をリクエストしておきながら
今日まで読んでいなかったSha-Laです…。
す、すみません。
すごく気になっていたんですよ!
大学生になった清次郎とひかりちゃんの恋。
ただ、体調が悪くて字が読めない状態で…。

今日はいろんなブログ作家さんの小説ブログを
あちこち、1話(もしくは数行)読んでみたんですが、
やっぱりデジャヴさんの書き方が
私にとっては一番読みやすいです。
(そして、ストーリーも私好みです。笑)
短い文章に感情も乗せられて。すごいなと思います。

今の年になると「高校生に戻りたいー!」って思いますが、
彼氏が大学生となると、やはり不安でしょうね…。
また、続きを読ませていただきますね!
  • posted by Sha-La 
  • URL 
  • 2014.06/05 13:03分 
  • [Edit]

Re: Sha-La さん 

こちらこそ、ご無沙汰しております。
返信が遅くなり申し訳ございません><
新作作っておきながら、めっちゃ滞っております…(´Д`;)ヾ ドウモスミマセン

読みやすいと言っていただいて嬉しいです♪
ストーリーがちゃんとしていれば良いのですが、
いかんせん推敲とか面倒で←ダメ人間

凝った文章を書きたい時もあるんですが、
いかんせん語彙力が乏しいもので…(苦笑)
精進しますw

  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2014.07/08 13:52分 
  • [Edit]

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