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ビー玉色の思い出 27

第二幕 「露草」


 近所の公園に飾られた七夕の笹が、さらさらと揺れていた。
 静かに降る雨と似た音。
 あるいは、地元で一番きれいな小川の音のよう。

 風に揺れる七夕飾りと、色とりどりの短冊。
 キレイな字と、キタナイ字。
 町内会の大人から子供まで、いろんな人が書いたのだと容易に想像がついた。

 たけしは笹のなかに手を挿し入れて、自分が書いた短冊を探した。カサッと軽い音が広がった。
 次々に青い色の短冊だけを手に取り、あれでもない、これでもないとひたすら自分の短冊を探す。

「あった」

 大きな字で<大金持ちになりたい>と書かれた短冊。
 名前は書いていないけど、間違いなくこれは自分の短冊だった。
 どこか誇らしい気分でそれを眺めやって、ふと振り返った。

 猛は野球帽の下で目を細め、後方に立つ少年をじっと見つめた。
 相手はビクリと肩を揺らして、気まずげに視線をあちこちにさ迷わせた。
 少年が手に持っているのはピンク色の短冊だった。

「男なのに、お前ピンクなんか持ってんのかよ」

 猛が言うと、少年は眉を寄せた。
 悔しさを滲ませた目、怒りを込めた眼差しを向けられる。
 だが、猛は知っている。
 こいつはなにも言えない奴だ、と。
 こいつは絶対に逃げる。
 ほら背中を向けた。そして、今から逃げようとするんだ。
 だから猛は声をかけた。その怯えた背中に向かって。

「せっかく書いたんだから、飾って行けばいいだろ」

 少年は立ち止まり、一呼吸置いてから振り返った。
 小走りで猛の隣へやってきて、荒々しい手つきで短冊の紐を笹に結びつけた。
 丁寧にやらないから、すぐにほどけて落ちるだろう。
 それが、いけなかったのだ。
 それが、猛の神経をイラつかせた。

「へたくそ。お前、なんでいつもそうなんだよ」
「…………」
「だから女子からも嫌がれるんだよ」
「…………」

 少年は黙りこくったままで、目端だけをぴくつかせてうつむいた。
 仕草ひとつ、表情ひとつでさえイラつく。

 猛は黙ったまま風にあおられるピンク色の短冊を見つめた。
 風に吹かれて飛んでいけ。
 落ちてしまえ。
 マイナスな文句が頭に浮かんでは消え、猛の心を沈ませ、イラつかせる。

「ん?」

 猛は気付いた。
 ピンク色の短冊は、裏表、ひらひら揺れている。
 それを手にとって確かめる。

「お前、なにも書いてないじゃん」

 猛は嗤った。

「お前って本当に、なにもない奴なんだな」

 今まで思っていたことを吐き出すように言った。
 すると、少年は泣きそうな顔で猛を見上げた。
 小学六年生の猛と、小学四年生の少年とでは身長差がある。
 それに、猛はクラスの中でも一番背が高い。中学生と並ぶほどだ。

 彼の目から自分は、とても大きな存在に見えるだろうと確信している。
 そして自分の目からは、少年はとても小さくて、愚かで、腹立たしい存在に見える。


「書き直してから来いよ。他の奴の迷惑だろ」

 そう言って、猛はピンク色の短冊を力強く引き寄せて、笹から引っ張りぬいた。

 絶望的な眼差しを向ける少年の目の前で、猛はさらに冷酷な行為を続けた。

 びりっと音を立てて破れた短冊。

「俺が捨てておいてやるよ」


 少年は右目から涙を流して、猛の手元を見続けた。
 まるで目が離せなくなったかのように、固まった。

 心臓がぞわりと粟立った。
 やりすぎた、と思った。
 でも謝ることはしない。だって、こいつが悪い。
 俺をイラつかせるこいつが、コイツが、コイツガ。


「そんなに欲しいならやるよ!」

 短冊を少年の胸に押し付けて、猛は笹から離れ公園から出て行った。

「あーくそ! ムカツク!!」

 頭から笹の葉の音が消えない。
 消えない。

 口のなかが苦い。
 なにも食べていないのに、苦い。
 喉が痛い。
 ムカツク。
 ムカツク。


 本当に、ムカツク奴だ。





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*Comment

こんばんはv 

こんばんはv

第2章スタートされたんですね!楽しみ!
猛君の願い事、直球で子供らしくていいなぁw

デジャヴさんは七夕に願い事をされましたか?
私も次回の記事で何となく書いて見ようと思いましたw


  • posted by hukuya 
  • URL 
  • 2013.07/13 20:22分 
  • [Edit]

Re: hukuya さんへ 

こんばんは!

二章スタートしました!
子供の頃、私は猛のように
短冊に「大金持ちになりたい」と書いたものです(笑)

七夕の歌を口ずさみながら楽しく書きましたw
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.07/17 23:31分 
  • [Edit]

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