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ビー玉色の思い出 22

 神々は己の脇をすり抜けるかすかな風に振り返る。
 ただの風ではない、妙な違和感。
 まるで何者かが駆けていったような、風。
 振り返ってもその姿は見えなかった。
 一様に皆、首をかしげた。




 透明な衣の下、天女は息を切らせていた。
 ときおりつまずきながらも、足を止めることなく走っていた。
 涙が次々に溢れ出すのも拭かずに、走った。

(たっ……、雷太っ……雷太!)

 
『俺、もう思い出せないんだ……母さんのこと、思い出せない』


 耳に残る言葉。
 胸がきしんで、思わず目をぎゅっとつむった。
 今行ったところで、顔を見せられるわけではないのに。

(ごめんなさい、ごめんね)

 今していることは、ただの自己満足でしかないことは分かっている。
 だけれど、会いたい。
 今会えばきっと、この先の苦しみは増すかもしれない。
 頭にあの子の姿を刻み付けたら、ますます会いたくなる。
 忘れられなくなる。
 一緒に、また一緒に暮らしたくなる。


 天女は雷紋殿を見上げた。
 涙が、顎先から落ちた。
 気配を殺して、幾年ぶりの我が家の敷地へと忍び込む。

(え……なにこれ……)

 どうして家が半壊しているのだろう。
 庭はきれいに整えられて、雷太が遊んだ後であろう形跡が見える。
 幼い頃は砂遊びが好きだったのに、木の棒や鞠が転がっていた。

 天女は鮮やかな水色をした鞠をひと撫でして、庭を巡った。

 二本の大木は、相変わらず青々とした葉を茂らせていた。
 幹にはしめ縄が巻かれ、二本の大木に渡された赤縄には大きな鈴がついていた。
 懐かしい、と目を細める。

 
 我が家の変化に戸惑い、しかし、懐かしさも同時に感じる。

 不思議な心地で家に入り、色々と見て回る。
 「機織の間」の障子に背を預けて眠る春雷の姿があった。

 自分が機を織っている間、そうやってずっと部屋の外で待っていた。
 障子越しに会話して、笑い合っていた。
 

 天女は口を開きかけて、つぐんだ。
 来た道を戻り、家の――ある場所を目指して静かに歩いた。




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*Comment

No title 

おはようございますv

おお、ついに親子の再会ですね!
「母さんを思い出せない」ってそんなの悲し過ぎるよ~・・
アマちゃん!何とかしてあげてー( ´Д⊂ヽ

家が壊れているのって、風来夫婦で一騒動あったからですねw
母さんと雷太の再会のシーンがすっごく楽しみです(´∀`*)

  • posted by hukuya 
  • URL 
  • 2013.06/11 06:14分 
  • [Edit]

Re: hukuya さんへ 

おはようございますっ!
訪問、そしてコメントありがとうございます^^

第一幕もそろそろ終わりに近づいてきました。
子供たちが駆け回る風景を早く書きたくて
うずうずしています(笑)

第一幕によって、雷太と風介は色々なことを考え始め、
自分と向き合っていきます。
どうぞお楽しみにっ!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.06/12 09:42分 
  • [Edit]

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