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ビー玉色の思い出 20

 御簾の向こう側から聞こえてくる泣き声。
 天照大神は意識を断ち切るようにまぶたを閉じ、重い息をついた。
 ゆったりとした足取りで、脇に控える天女に近づく。
 厚手の衣を脱いで差し出しながら、気持ちを切り替える。

「政務に戻る。あやつに」

 床をする衣の音が、ぴたりと止まった。
 眼前の天女は、袖口を目元に当てていた。
 震える桜色の唇を噛みしめて、声を押し殺しながら泣いていた。

「やはり、辛いかえ? 望んだのはおぬしだと言うのに」

 天女は深くうなずきかけて、天照大神の言に固まった。

「声も顔も出さぬ代わりに、一目見せてくれと頼むからそばに置いてやったと言うに。めそめそと泣き出しおって、これでは私が悪者のような扱いではないか。おぬしも、おぬしの子も、部外者の私を恨むのかえ?」

 あんまりな言葉に、天女は思わず顔を上げた。
 普段は穏やかな瞳が、複雑な色をたたえて向けられる。

「私がいつ、あなた様を恨みましたか。恨むは我が身。あの子を悲しませる原因を作ってしまった、この私でございます!」


 天照大神は、喉を震わせて笑った。
 その目、よう似ておるわ。口のなかで呟いて、天照大神は目を細めた。
 

「すべて聞いての通りじゃ。
 しばらくは、会えぬぞ。気が遠くなるほどの時間、かもしれぬ。
 神にとって時間とは縁遠いが、それが血の縁であれば別の話であろう」

 天照大神は歩を進めて、横顔を見せた。

「着いてきや」

 呆然と立ち尽くしてた天女は、言われてからはっとして追いかけた。
 天照大神が政務の合間に休む部屋へ通されて、天女はあたふたとする。

「私のような者が立ち入ってはならない場所でしょう」
「今回だけだ。今後は入れぬ」

 ぴしゃりと返され、天女は口をつぐんだ。
 天照大神はたんすから適当な衣を取り出して抱えると、部屋を出た。
 中庭にある青く澄んだ池に、衣を浸す。
 すると、模様から色素まで、一切の色がサッと消えた。


「まぁ……」


 みるみる透明になっていく衣に、天女は声を上げた。
 衣は次第に真珠色に染まり始めていく。
 天照大神は、衣が真珠色の染まりきるのを待つ間、口を開いた。


「私が持つなかで、大き目に繕われた衣だ。
 おぬしぐらいなら頭からつま先まで、すっぽりと覆われるであろう」
「あの?」
「私が寝殿に帰る前に、戻ってこい。そして、この衣は一度たりとも脱ぐな。
 それが約束できるのであれば、行ってこい」





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