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二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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ビー玉色の思い出 19

 天照大神は小さく息をついて、雷太を見つめた。

「会いたいと言っても」


 天照大神の声に、雷太はゆっくりと顔を上げた。


「家から追い出したのは、雷太、おぬしであろう」
「違う! 俺は」
「機織の間は、男が入ってはならぬ領域だ。
 それが、稚児であろうと大人であろうとな。
 見てはならぬ、入ってはならぬ。ならぬの禁忌を犯したのはおぬしだ」


 雷太は涙に濡れた瞳を天照大神に向け、悔しそうに唇をかんだ。
 言い逃れはできない。
 幼きころ、機織の間に入ってはならぬと言われていたのに、
 遊び半分で入ってしまった。
 機を織っていた母の、絶望した気配が今でも忘れられない。
 顔だけが、忘れていくというのに。


「だけど、けどっ、俺は母さんに……会いたいっ」
「天も地も、そこに則があれば乱すことはできない。
 駄々をこねても、どうあがいても、罪は無かったことにできない」
「無かったことにしてほしいわけじゃない!」

 涙でぐしゃぐしゃになった顔で、
 言葉もまともに言えないほど嗚咽まじりで、
 雷太は声を大にして天照大神に懇願した。


「ただ、一目でいいから、母さんに会わせてください!」
「ならぬ」
「お願いします!」
「ならぬ。則は乱せぬ」
「天照様ぁ!」
「くどいぞ!」


 天照大神の丸い双眸が、カッと見開かれる。

 部屋が一瞬にして暗くなり、天照大神の背から光が、風が生まれた。

 ぐわっと、天照大神の身から強大な覇気が、風に乗って部屋を駆け巡る。
 肌をちりっと焦がすような、強い気。


 風来と春雷は目をすっと細めて、わずかに身構える。

 
 風介は天照大神のまとう気に驚きながらも、泣き出しはしなかった。
 天照大神の怒りの矛先は、雷太。それを重々理解している風介は表情をいくらか改め、雷太の前に膝をついて両手を広げた。袂が風にバタバタとひるがえり、床に落ちた影が激しく動いた。


「風介……」


 雷太は呆気にとられたように、風介の頭を見つめた。
 小刻みに震える風介の指先。

「いい、やめろ。お前まで怒られる」

 風介はなにも言わなかった。
 きっと声すら出せないんだ。
 怖いのに、だけど、自分を守ろうとしてくれて。

「ごめん。ごめん、風介」
「天照! もう良いだろ……もう、勘弁してくれ」


 雷太の声と同時に、春雷の声が響いた。
 天照大神は怒りを納めて、覇気を拭った。
 駆け巡っていた風は穏やかになり、やがて落ち着き、消えた。
 部屋は明るくなり、もとの空間に戻った。


「雷太に命ずる。雷神の位を授かるまで、私の前に現れるな」
「えっ」
「試練を受け、春雷に認められ雷神に就くまで、会いにくるな。
 ここを訪れれば、問答無用で叩き出す。今日はもう下がりや」


 鈴の音が天井から降り落ちてきて、御簾が下ろされた。
 御簾の背後の壁に、幾筋もの水が伝い――迫り来る轟音とともに滝が出来た。

 天照大神が居た場所に、落ちていく滝。
 滝が落ちる先はいったいどこにあるのだろうか。
 いつまでたっても部屋が洪水になることはなかった。




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