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すっごくRPG!!

二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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ふせん


「安城(あんじょう)先輩って……結婚してるんですかね」

 私の呟きのような問いかけに、隣に座るカヤコ先輩がにたっと笑った。

「してないよ」

 百貨店の総合案内所のカウンターに、私とカヤコ先輩は座っていた。
 安城先輩、というのは男性社員で――すごくかっこよくて、憧れの人。
 歳も二つ三つしか違わないって聞いた。
 いつも無表情だけど、ごく稀に見る笑顔が可愛くて、目で追ってしまう。

(社内恋愛なんて、絶対にしたくないって思っていたのに)

 自分への落胆にため息が出る。

(新入社員の私なんか、眼中にないだろうなぁ)

「はぁ~あ」
「ふふっ。仕事中に落ち込まない」
「あ、はい! すみません!!」
「ちなみに、彼女もいないって聞いたけど。今はどうか分からないけどね」

 先輩が急に立ち上がる。

「あの~すみません」
 と、大学生らしき女の子たちがカウンターに寄ってきた。
 私はそれを見つめながら、頭の中で思う。

(少しはチャンスがあるのかな)

 チャンス? チャンスなんてあるわけない。
 安城先輩が見てくれるわけ、ない。

(仕事しよ……)

 もう何度目か分からないため息を最後について、私は仕事に没頭した。

 それから二日後のことだった。
 安城先輩と勤務日がかぶり、一緒に仕事をすることになった。

「おはよう」
「おはようございます。よろしくお願いします!」

 ドキドキしながら挨拶をすると、安城先輩は目を細めて言った。

「髪切った?」
「え、あ、はい」
「そっか。良いね」
「ありがとうございます」

 驚いた。気付いてくれるんだ。
 昨日、長かった髪をばっさり切った。
 仕事に集中するために、安城先輩への思いを断ち切るために切ったのだ。
 それなのに、そんなことを言われると。

(良いねって……言われた……自意識過剰かもしれない。でも、嬉しい)
 

 それからは仕事が始まり、いつものように仕事に励んだ。
 安城先輩がお昼休みから帰ってきた時、私はぎょっとして目を逸らした。

(こういう時……どうすれば良いんだろう……)

 悩みに悩んで、手元にある付箋を見つめた。
 これに書こうか。それとも、直接言ったほうが良いのかな。
 でも――何て言おう。

「あの、先輩……」
「うん?」
「これ……その、すみません……」

 目を逸らしつつ、付箋を作業台に張った。

『下、開いてます』

「えっ!」

 先輩は後ろを振り返って、ごそごそと動いた。
 チャック開いてます、と書いたら失礼かと思って言葉を変えたが、
 伝わって良かった。

「ありがとう」

 照れ笑いを浮かべる先輩に、心が締め付けられる。
 そうやって笑うんだ。
 社内恋愛はしないって決めたのに、それからも先輩のことを目で追ってしまう。

「大島さんって、心配性?」

 ある日、安城先輩に唐突に聞かれた。

「え?」
「いや、だって俺のこといつも見てるから」
「ご、ごめんなさいっ」
「いや違う違う。また開いてるんじゃないかって、心配してくれてるんだなって思って」

 そういうわけじゃないんだけどな。
 思ったら、口に出ていた。

「それだけじゃ、ないです……」

 安城先輩は少し黙って、ちょっとだけ暗い顔をした。

「俺…・・・まだ何かやってる?」

 ずーん、と落ち込む姿。
 あまりにも的外れな反応に、吹き出してしまった。

「ぷっ」
「なんで笑うんだよ。違うのか?」
「違わなく、ないかもしれなくもないです」
「なんだよそれ」

 先輩もつられて笑い出した。

「すみません。でも、気になってしまうんです」

 どうやったらもっと近づけるだろうって思っている。
 だけど、これ以上を望めばきっと――。

「暗い顔はしない。仕事中は笑顔でいること」
「はい、すみません」

 感情が顔に出るあたり、私はまだまだ未熟なんだ。
 学生気分で仕事をしているわけじゃないけど、子供なんだ。
 そんな自分に嫌気が差す。
 ため息を落とすと、安城先輩が穏やかに笑った。

「お前の笑顔そこそこ可愛いんだから、笑っとけ」

(かっ、かわっ!!!!?)

 驚きすぎて、頭が真っ白になる。
 なんていう嫌がらせだろう。
 私が先輩のことを気になっている状態で、それを言われるなんて。

「あ、ありがとうございます……」
「うん。ところで、さ」

 先輩がすっと腕を伸ばしてきた。
 作業台に貼られた付箋には。

『今、フリー?』

 どういう意味だろう。
 手が空いてるかってことだろうか。
 それとも彼氏はいないかってこと?

(よ、よく分からないっ……と、とりあえず全部ひっくるめて)

「は、はい」
「ふぅん。そっか」

 妙な沈黙が続いたまま、仕事が再開される。

(うわ、なんだろう。すごくもやもやする……どっちの意味なんだ!?)


 社内恋愛はしないって決めてたのに。
 しばらくは続きそうだった。


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