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ビー玉色の思い出 14

 礼服に着替えた雷太たち一行は、内殿からの使いとともに天照大神の待つ内宮へと向かう。
 風神の屋敷 風香殿(ふうかでん)は雷紋殿同様、外宮にあり、内宮までは距離がある。使いが引き連れてきた天馬に乗り、まずは内宮の正門の掌礼門(しょうれいもん)を目指す。


 初めての天馬に、雷太も風介も顔を強張らせていた。
 こわごわと背筋を固める風介に風来は天馬の手綱を持たせた。
 ぎょっとして振り返ると、風来は涼しげな美貌に微笑を浮かべた。


「怖がることはない。力をいれずに持つだけだ。道をそれて歩こうとした時だけ合図を送ればいい」
「は、はい。力を、いれずに」

 やんわりと手綱を握ると大きく温かな手が、手の甲に重ねられた。
 天照に会う前から緊張していると疲れる、と言葉も添えられた。
 父の気遣いが嬉しく、舞い上がる思いで笑った。


「父上、掌礼門に着くまでお話してもよろしいですか。父上にお話したいことが山ほど」
「そう慌てて話すな。舌をかむぞ」


 雷太は、楽しげに会話を始める風の親子をぼうっと眺めていた。
 天馬の揺れに慣れて、よそ見ができるほどの余裕がうまれていた。

 うつうつとした気分を抱えながらも、風介の楽しそうな笑顔を見ると和やかな気持ちになる。
 良かった、本当に良かった。心からほっとする。
 しかし、口からついて出る息はため息だった。

「どうした」

 同じ天馬の背に乗る父に尋ねられ、雷太はちらりと微苦笑を向けた。

「疲れてきただけ。普段、着物なんて着ないから」


 苦しい言い訳をして、天馬の首に手を伸ばした。

 つややかな純白の毛並みは見た目通りさらさらとしている。
 天馬の温もりが指に心地よかった。折りたたんだ翼の羽根がそよ風に震えている。
 馬、と称するが天馬には琥珀色の二本の角があり、下界に生きる鹿のそれと変らない姿だ。
 ふと、雷太は顔をしかめた。
 天馬を観察して気分を晴らそうとするも、こぼれてくるのは深く重い息ばかりだった。


「雷太、思うことがあるなら教えてくれ。そんな暗い顔をされると、俺まで悲しくなる」

 春雷が言わんとしていることは重々承知している。
 澱のように溜まった息をどうにか吐き出す。

「なにも」

 春雷は顔をしかめた。
 呟くように答えた表情はどこまでも堅い。
 その言葉を信じられるはずがなかった。

「母さんに会いたいか」
「……約束を破ったのは俺だから」
「仕方なかったんだ、お前はまだ小さかったから」
「でも……天照様は仕方ないとは言ってくれなかった」

 思い出すのもつらい、罪の記憶。
 できることなら無かったことにしたい出来事。

 天照は激昂したに違いない。卑しき子供だと思ったに違いない。
 まだ見ぬ天照の姿は幼い雷太のなかで形成されていた。
 威厳に満ち、鋭い視線で雷太を射抜くに違いなかった。
 底冷えするような恐怖。
 それでも、雷太は行かなければならなかった。


「雷太。俺はなにがあっても雷太の味方だから」

 父の言葉に、雷太は目をぎゅっとつむった。
 今はまだ泣くわけにはいかなかった。
 歯をくいしばり、目頭にこもった熱いものが引いていくのを待つ。

「さあ、掌礼門に着きました。天馬を降り、ここから先は内殿まで歩いていきます」

 使いがそう言って、天馬から降りた。
 壮大な掌礼門の下を雷太は父の手を握り、歩み進んだ。






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