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アーモンドの花(7)

 翌朝――……。

 村に鐘の音が響き渡る。
 イーサンは不思議な心地でその音を、教会の外で聞いていた。
 数年ぶりに自分が鳴らさぬ鐘を聞いた。

 それでも、やはり据わりが悪くて教会へ赴いていた。

「イーーサーーン!!」

 空から鐘の音に掻き消されそうな、しかし彼女の叫び声が飛んでくる。
 ふっと上を仰ぎ見ると、彼女は地平線を指差して笑っていた。

 なにかを言っているが、よく聞き取れない。
 言いたいことはなんとなく分かるが、彼女の声が聞きたくなって思わず駆け出した。

 ――ゴーン、リゴーン、ゴーン……。


「鐘の音って真下で聴くと、耳が痛くなるのね!」

 塔に登ったイーサンに彼女は開口一番、声を張ってそう言った。

「それよりも、見て!! アーモンドの花がっ」

 地平線から顔を出した太陽に照らされたたくさんの庭園。
 植えられたアーモンドの樹には、白い花が咲き乱れ、花の海が出来ていた。

「私、知らなかった! こんなに美しい景色があるなんて!!」

 子供のようにはしゃいで、彼女は満面の笑みを浮かべた。
 寒さなのか、それとも興奮でなのか分からないが、頬がピンク色の染まっていた。

 イーサンは彼女の横顔を見つめながら言った。

「アーモンドの花は日が経つにつれて、君の頬のような色に染まるんだ」
「え? なぁに? よく聞こえないわ!!」


 イーサンは微かに笑った。
 やっぱりうまくいかないと、苦い笑みが込み上げてくるが押し堪えた。
 だが、勇気を出すと決めたのだ。
 いつまでも、言い訳を繰り返すのはかっこ悪い。
 ぐっと息を飲み込んで、吐き出してみる。


「幸せか?」

 少し、勇気をもって言ってみた。

「ええ!」

 彼女はにっこりと笑った。
 心が満たされる。
 こんなことで、彼女の笑顔ひとつで満たされる。
 今この一瞬だけは、彼女を幸せにできた。
 

「来年もまた見せてくださる? イーサン」


 イーサンは首を横に振った。
 彼女が眉を下げる前に、イーサンは口早に言う。


「明日もまた、一緒に見よう」


 小さな幸せを積み重ねていけば、良いのだろうか。そうしたら、彼女をずっと幸せにできる、ということになるのだろうか。
 分からないけれど。
 まったく分からないけれど。

「明日も早起きしなきゃ!」
「そうだな」


 アーモンドの花が咲き続けるまでは、きっと幸せは続くだろう。
 そう、イーサンは思ったのだった。





 ――おわり。

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*Comment

No title 

小さなようで、花咲くような幸せが積み重なるのは、とても貴重で大きな幸せ❀❀
やっぱり癒されるなぁ(//▽//)
素敵な時間をありがとう❤
  • posted by 椿 
  • URL 
  • 2013.04/04 20:46分 
  • [Edit]

Re: 椿さんへ 

こんばんは^^
訪問、そして温かいコメントありがとうございます♪

この作品はファン・ゴッホの『花咲くアーモンドの枝』を見て、創作しました。
ゴッホの絵は正直好きになれないのですが『花咲くアーモンドの枝』は好きです。
一目見たとき、まさかゴッホの絵だとは思いませんでした。
こんな、やわらかな絵を描くんだって初めて感動しました。
そういうやわらかさから、今回の『アーモンドの花』は生まれました。

穏やかで、幸せな、そしてやわらかいイメージで執筆したのですが、
なにか感じ取って頂けたら嬉しいです。

改めて、いつも作品を読んでくださって、ありがとうございます^^
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.04/04 21:00分 
  • [Edit]

No title 

こんばんは^^
イーサンの人柄が滲み出る、綺麗なお話でした。
寡黙な彼だからこそ、その粋な演出に、より深みを感じられたように思います。
素朴なだけに、非常に心が温まる良い作品でした。
  • posted by 木彫 
  • URL 
  • 2013.04/09 22:49分 
  • [Edit]

Re: 木彫さんへ 

こんばんは^^
いつもありがとうございます。
お忙しいなか読んでいただき、嬉しいです。
見た目怖いけど実は草花を慈しんだり、小動物が好きだったりする男性にはきゅんとします(笑)
完全に趣味に走りました、はいw
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.04/11 21:30分 
  • [Edit]

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