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二章 駿馬、駆ける (3)

 連れていかれた場所は、ここに訪れて最初にやってきた執務室だった。どうやら、ここがベイスの部屋らしい。高木に代わって管理している間に私室になってしまったようだ。
 寝食もままならず常に仕事をしているのではと気遣うと、ベイスは疲れを滲ませた顔で苦笑を浮かべた。


「あなたはいつもそうなんですか」
「え?」
「人に優しすぎる」
「あの、ごめんなさい……」
「咎めるつもりはなかったんですが、申し訳ない。ただ、この世界で人を信用し過ぎるのはかえって危険です。常に人を疑うくらいが、身を守るにはちょうど良い。王子も常時あなたをそばに置いておくわけにはいかないと思うので……」


 ベイスはため息混じりに言葉を切った。


「私は言葉の配慮が足りないと言われるんです。あなたの心を傷つけたいわけではないのですが」
「いいえ、私のためを思ってそう仰ってくださるのでしょう。だから、大丈夫です」

 差し出された椅子に掛けながら、美都はベイスの言葉に瞬いた。

「でも、言葉の配慮が足りないって……先輩、ベイスさんにそんなことを言うんですか」
「え、ええ」


 ベイスは妙に歯切れの悪い反応をして、向かいの椅子に座った。
 高木が言ったんじゃないんだ。
 勘の鋭い美都は、ふむと考え込む。王子の側近であるベイスにそんなことを言える人が、高木以外に居るんだろうか。有力な立場の人だったら、きっと上の王子たちについているだろうし。


「ベイスさんより身分の高い方がいらっしゃるんですか」
「いえ、その」
「あっ! 分かりました!」

 美都は両手を合わせて、はつらつと笑った。
 なんだ、そういうことか。


「女性に言われたんでしょう!」


 ベイスは一瞬、目を丸くしてつられたように破顔した。
 美都は正解したことに満足し、にこっと笑った。

「まったく、あなたには敵いません」
「先輩にもよく言われます。勘だけは鋭いんですよ、私」

 ベイスは美都の言葉を引継ぎ、指を組んで前傾姿勢になった。

「その先輩を、守りたくはありませんか」


 本題だ、と空気で分かった。
 ベイスの穏やかな表情と、緊張に強張った美都が見つめ合う。


「このままこの国に留まれば、王子は確実に斬首刑です」
「なっ!?」



 敗戦すれば、シャンデリア王族の血は絶たれる。
 まことしやかに囁かれるガナン帝国将軍、参戦の噂。冷血の帝国将軍と称される者が出てくるとすれば、むごい現実が待っているに違いない。まずシャンデリア王族に平穏な時間は訪れないと考えていい。



「王子は、いざとなれば王族の力で向こうに飛べば良いと思っているようですが、飛べない状況で拘束されれば危険です。何かが起こってからでは遅いのです。どんな目的があるのかは分かりませんが、向こうが亡命しろと言うのであれば、今のうちに亡命の件を呑み、命を守らなければ」


「でも、先輩は拒んでいます。それに、目的が分からないのに、その件に乗るものどうかと思います……」


「それでも、乗るべきです。しかるべき契約をし、皇帝からの保障を得れば良いのです。今は皇帝からの保障を得ることが一番大事なのですよ。そのためなら私は何だってすると言っているのに、あの方は、この国のことばかり」


「王子とは、国の柱の一つなのでは。だから、先輩も捨てられないんじゃ」


「今さらこの国を憂いてどうするのです。 亡命で国を捨てるのと、異界へ去って国を捨てるのと、どう違うと言うのですか……国を守りたいなら、もっと早く、こんなことになる前に救ってほしい。中途半端にこちら側に関わるからこんなことになるのです。あちらで幸せに暮らしてくださっていたら……、こんな思いを抱かなくて済んだのに」


 ベイスの思いがどっと押し寄せてくるように、伝わってくる。
 高木はどちらの世界も捨てられない。
 どのような経緯で高木がこちらの世界に関わろうとしたのか、そしてこんなにも深く関わってしまったのかは分からない。だが、高木はもう退けない場所まで来てしまった。情に引きずられている。


「あの方には覚悟が無かったのです。それならば、最後までそうあってほしい」
「なら、今すぐあちらの世界に戻ったほうが良いのでは」
「あの方がそれを良しとされない。私に負い目があるから、民を見捨てられないから、理由は色々あるのでしょうけれど。あの方は、この国の難事が解消されない限り眠れないのだと言っておられました」
「どっちを選んでも、良い思いはしないのですね」


 美都は立ち上がり、ドレスを摘んで歩き出し、扉の前で振り返った。
 ベイスは止めようとはせず、送り出すように立ち上がった。


「もう行きますね。先輩が起きたら大騒ぎするでしょうし。亡命の件は、考えておきます。先輩の身が、やはりどうやっても危険だと言うなら私から説得してみます。それでよろしいでしょうか」
「ありがとうございます」


 美都は言葉を選ぶように視線を下げて、ゆっくりと話し出した。 


「ベイスさんが、先輩を……国よりも大切にしてくれているんだと分かって、嬉しかったです」
「国に仕えるべき者としては失格です。褒められることではありません」
「それでも、私にとってはありがたいことなんです」


 おやすみなさい、と出て行った美都を見送り、ベイスは身を投げるように椅子に座った。力を使い果たしたかのように背をもたれて、天井を仰いだ。
 美都の温かく澄んだ目を見ていると、己がどれほど追い詰められているか身に沁みた。縋りたくなる。なにもかも許されたいと思ってしまう。
 思った以上に、自分の心は疲れきっているようだ。


「情など、当の昔に捨てたはずなのに」

 嘲笑を口元に薄く乗せて、目を閉じた。






ありがとうございました & お疲れ様でした。
久しぶりの更新です。ちょっとずつ元のペースに戻していけそうです。

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亡国のシャンデリア 目次
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*Comment

No title 

更新お疲れさまです( ^^) _旦~~
ゆっくりマイペースが一番です♪

ベイスさんもお疲れさまですね。
これからどうなっていくのかドキドキします!
  • posted by 椿 
  • URL 
  • 2013.03/06 16:44分 
  • [Edit]

Re: 椿さんへ 

こんばんは^^
訪問、コメントありがとうございます。
かなりゆっくりしてしまいました(苦笑)

一応道筋はあるんですが、また逸れそうで怖いです。
頑張りますヾ(℃_゜)
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.03/06 19:45分 
  • [Edit]

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