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二章 駿馬、駆ける (1)

 怖いくらいの静寂。
 自分たちの世界ではいつも音で溢れていた。夜でも、車の音、電車の踏み切りの音、時には若者のゲラゲラと笑う声が聞こえてくるのに。
 この国は風の音だけがいつも漂っている。
 窓の外、石垣の向こうにはあのクリスマスの日と変らず、寒々しい光景が広がっていた。

 顔を強張らせる美都の手を取って、高木は執務室へと向かった。
 ノックもなしに入ると、ベイスがやや驚いた顔をした。
 高木が居ない間はベイスが指揮の一切を預かっているため、執務用の机に着いていた。
 高木に隠れるように立っていた美都に気付くと、柔らかく笑んだ。

「お久しぶりです」

 言われて、美都は嬉しくなった。
 覚えててくれたのか。たった一度会っただけなのに、心に残っているなんて。

「はい! お久しぶりです、ベイスさん」
「お変わりなくお過ごしですか」
「はい。ベイスさんもお元気そうでなによりです」

 ベイスは「ありがとうございます」と穏やかに言った。
 二人のやり取りに高木は微笑ましそうに口元を緩めて、美都を椅子に座らせた。
 小奇麗なブランケットを美都の膝にかけて、高木は執務用の机に腰を寄せる。
 高木がなにも言わずとも、ベイスは報告を始めた。

「相変わらず、ガナン帝国に民が流れていますね」
「そうか。あちらさんが動き出すのはいつだと思う?」
「ガナン帝国の西の関所が、旅券の規制を戻して兵を増やしたら、その頃合でしょう」
「旅券?」

 美都が思わず口を挟むと、ベイスは特に気にすることも無く説明した。

「現在シャンデリア全国内の行政が崩壊しているため、身分照明となる旅券が発券されない状態です。国内外、関所を通る場合は、この身分を証明する旅券の提示が必要なのです。旅券の審査が通れば、市や国が運営する機関を利用できるんです。ガナン帝国はわが国の難民を受け入れているわけですが、シャンデリアからガナン帝国への入国の場合だけ、この旅券を必要としていないのが、現在の状況です」
「えっとじゃあ、身分を証明しなくても入国できちゃうわけですね」
「ざっくりと言えばそうですね。ただし、入国の際に新たな旅券が発券されて、難民の印が旅券につけられれます。使用できる機関は極端に制限されるようです」

 へぇ、ととりあえず頷いてみる。
 政治経済は苦手だ。大人しくしていることに決めた美都は、「先をどうぞ」と手で合図した。
 ベイスは苦笑し、報告を続ける。

「発券の際に時間が掛かるようで、国境付近は人で溢れているようです。野盗も頻繁に現れ、我が兵が対処に当たっておりますが手が足りず窃盗や誘拐、殺傷事件が相次いでいる状態です。関所の様子は未だに動きが無く、兵が増やされる様子はないと」
「なにがしたいんだろうな。上の二人が共闘することは絶対無いって俺でも分かるのに、なにを待っているんだろうな、あちらさんは。スパイだっていくらでも送っているだろうし、情報を掴んでいるなら好機だって分かっているだろうに」

 ベイスは書類をまとめて、静かに高木を見上げた。

「亡命の件はいかがいたしましょう」
「ない。そう伝えたはずだぞ、ベイス」
「しかし、亡命すれば流れた難民の身が保障されるんですよ。難民にとって施療院(せりょういん)の使用許可は大きいはずです。もうすぐ流行り病の季節です。蔓延する前に手を打たねば」
「それは……そうだが。俺は国を売ったと指差されるのは嫌だ」
「民は国を捨てました。あなたが民を思って亡命しても、誰もなにも言いませんよ」
「捨てたくて捨てたわけじゃないだろ」

 無料で病人や怪我人を治療するという施療院。
 ガナン帝国はわざわざ難民用にそれを作るという。
 どういう魂胆かは分からないが、民のためを思うなら亡命したほうが良いのかもしれない。だが、王子というプライドがその選択の邪魔をする。長くこの世界に、この国に留まっていたわけじゃないのに、なぜか守るべき国だという使命感が生まれている。

「今日中に決断する。もう少し、考えさせてくれ」

 美都は二人のやり取りを静かに見守っていた。
 どちらも民を思って考えている。自分になにかできれば良いのだが、なにせ平和な国に生まれ、育ってきた。サバイバル経験もないため、手伝えることなんてなにもない。
 せめて政治経済をちゃんと勉強しておけば、なにかの役に立てたかもしれないのに。

(ちゃんと勉強しておけば良かった)

 興味ない、で済ましていたせいでものを考えることも出来ない。
 美都は小さくため息をついた。








ありがとうございました & お疲れ様でした。
更新はスローテンポになると思います、ご了承ください。


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