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【最終話】 春、遠く…

 そうだ、と手を打って紫は藤馬の母親と話を始めた。
 明るい調子で話を終えて、紫は春乃の手を引っ張った。

「記念撮影。藤馬くんはお内裏様の前に、春乃はおひな様の前ね。
 お子ちゃま二人は兄さん姉さんの前に座って。ほら、夢ひざにおひな様置いて」

 てきぱきと指示を出されて、声を出すまもなく配置に着かされる。
 夢は藤馬の隣に行きたそうにしていたが、紫はそれを許さなかった。

「小さい子は前って相場が決まってんだよ。わがまま言ってないで笑え」

 幼いからと言って甘やかさないのが紫という女性だった。
 夢は夢でプライドが高く、紫に強く言われても簡単に泣いたりはしなかった。
 ものすごく機嫌悪そうに座って、紫を見た。
 いつの間に持ってきていたのかデジカメを取り出して、紫は構えた。

「はい、チーズ!」


 写真を撮り終えて、三人は大谷家を後にした。
 紫は夢の手を引いて、寒さに悲鳴を上げながら早足に戻っていった。
 だが、春乃は藤馬に引き止められた。

「なに? 藤馬」
「プレゼント、あるんだ。着物着るって聞いて、安物だけど買ってきたんだ」

 後ろ手で隠していたものを差し出す。
 可愛い紙袋を開けてみると、和柄のピン止めが入っていた。
 女の子向けのお店に入るのそうとう恥ずかしいはずなのに、買ってきてくれたんだ。

 胸が熱くなって、目を見て「ありがとう」を言えなかった。

「藤馬、迷惑かけて、ごめんね」
「いいよ。夢にはきっかけを作ってもらったようなものだし」
「え?」
「どうやって着物姿見ようか悩んでたから」

 藤馬ははにかんで、春乃の肩を押した。

「風邪ひくから、もう帰りなよ」
「うん。あの、本当にありがとう」
「じゃあね」

 手を振る藤馬に見送られ、春乃は家に帰った。
 家に着くと、夢はもう怒られたようでぎゃあぎゃあ泣いていた。赤ちゃんみたいに泣くから、祖母も伯母も驚いておろおろしていた。夢は一度拗ねたらなかなか元に戻らない。これからご機嫌取りをするのが大変そうだ。

 お内裏様だけだった内裏壇にようやくおひな様が戻り、見栄えのよい雛壇が完成した。
 それからは、宴会のようなお祝いが続いて、大人たちにしか分からない会話が始まる。
 紫に相手してもらおうと探していると、紫は裏庭が見える廊下に座って、たばこを吸いながらお酒を飲んでいた。朱塗りの杯を貸してもらったのか、酒瓶の横に置いてあった。

 桃の花が描かれたラベルに「桃花酒」と書かれていた。
 風情ある酒瓶に目を奪われていたら、紫が笑った。

「飲ませないからな。私が怒られる」
「の、飲まないよ!」

 吸いかけのたばこを灰皿でねじけして、紫は庭を眺めた。

「全然、春らしくないよな。桃でも桜でも咲いてくれれば良いのに」

 煙が消えたところで春乃は紫の隣に座った。
 ヒーターもなにもない廊下は冷たくて、寒い。
 紫にならって色のない庭を眺めてみる。紫が視線を動かしたのを気配で察して、ふと紫を見た。

「髪飾り、どうしたの?」

 言われて、春乃はぱっと顔を赤くした。
 それが答えになってしまって、紫は「ははん」と笑った。

「若いねぇ」

 老けて聞こえる台詞だ。

「お姉ちゃんも、若いはずなんだけど」

 紫は聞く耳をもたず、くっくと笑っているだけだった。
 膝を立てて座れるのが羨ましかった。
 着物だと、正座をしなくちゃいけない。着替えてこようかと思ったけど、藤馬からもらったピン止めを外したくなくて諦めた。足の痺れよりも、藤馬がくれたピン止めの方が大事だった。

「付き合わないの?」

 と、紫は真面目に言った。
 聞かれたからには答えなくちゃいけないけど、春乃は答えられなかった。
 告白する勇気はない。
 でも、たぶん。

「たぶん……両思いだから」
「ふぅん。藤馬くんはいい男に育つよ。ふっ、あの年頃のわりに紳士的だった。誰かに取られる前に……特に夢に取られる前に、自分の物にしておいた方が良いと思うけど」
「どうして夢が出てくるの!?」
「どうしてって、あいつ藤馬くんのこと好きだろ。どっからどう見ても」

 そうなんだ。驚いて心臓がドキドキと跳ねた。
 驚いて固まる春乃に、紫は笑った。

「ま、どちらかというと藤馬くんに印をつけられた方なんだろうな」
「どういうこと?」
「分からないなら分からなくて良いよ。藤馬くんも苦労するな」

 桃花酒を注ぎながら、紫は喉を鳴らして笑う。
 朱色の杯を掲げて紫は目を細めた。

「青春だねぇ」
「恥ずかしいからもうやめよう、この話!」
「でも、春はまだ遠いっと。頂きます」

 紫だけが楽しそうに酒を飲み、春乃は顔を真っ赤にして頬を膨らました。

 庭先で鳥が一鳴きした。
 本当の春は少し遠いけれど、庭に春がやってきたみたいに陽が射した。
 穏やかな光に、春乃は目を細めていつまでも眺めていた。
 








十話完結予定でしたが、思った以上に早く終わりました(笑)
プロット通りにはいかないもんですねぇ。
最後までありがとうございました!

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*Comment

No title 

こんばんは!
更新&完結、おめでとうございます(^^b

お雛様にふさわしい、ほんのり優しくて甘酸っぱいエピソードですね♪
春乃ちゃん、シャイで可愛いです。
藤馬君は押さえるところは抑えてるし、気遣いもできるいい男に育つよね(*^_^*)
素敵な家族だな~♪

あったかい時間をありがとうございました^^
  • posted by 椿 
  • URL 
  • 2013.02/14 21:28分 
  • [Edit]

Re: 椿さんへ 

こんばんは!
コメントありがとうございます^^

シーズンが終わる前に書ききれてよかった(涙w)
どうにも主人公(女)をシャイガールにしたくなるんです。肉食系女子と呼ばれる女の子が書けない。
夢はきっと肉食系女子に育つでしょう(笑)
紫姉さんは、かっこいいキャラ一直線。何気に紫姉さんが一番気に入っています♪

最後まで読んでいただきありがとうございました!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.02/14 21:44分 
  • [Edit]

No title 

こんばんは^^
春乃と藤馬が微笑ましくてついにやにや。

最近だとあんまりお雛様を飾るといった話は聞かないですね。時代の流れなのかもしれませんが、少々寂しい感じもあり。読んでてノスタルジックな気分になってしまいました。(姉妹合わせて「春の夢」というあたりから余計に儚く感じたのかもしれませんね;)

更新おつかれさまでした。
  • posted by 木彫 
  • URL 
  • 2013.02/27 22:32分 
  • [Edit]

Re: 木彫さんへ 

こんばんは^^
訪問そしてコメントありがとうございます。
今回も若干の恋愛要素を入れました(笑)

我が家では毎年お雛様を出して飾っています。今年はいつもより早めに出しました。というのも、今作を書いている時だったので、「ちょうどいい、出してしまうか」とノリで出しました。
お雛様や五月人形といった人形文化は衰退していくんでしょうかね。(何やかんやで残る気もしますが。)
鯉のぼりは残りそうですね、大きい物から小さい物まで、鯉を泳がす家はけっこう見かけるので(笑)
近所の家が大きな鯉を泳がせているのを見て、けっこう和みますw

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.02/28 20:11分 
  • [Edit]

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