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【四話】 恋の話

 紫が部屋にいるだけで、自分の部屋じゃないみたいだった。
 どさっとベッドに座って快適そうにする紫と違って、春乃はどこか緊張した面持ちだった。
 
 紫は春乃のベッドに寝転がり、少女マンガを読み漁っていた。
 どれもこれも真面目に読まずパラパラとめくっては。

「こんなのがつまんないと思えちゃう歳になったのか、私も」
「普通の男は甘い言葉なんて言やしなのにね、夢があるよねぇ、マンガって」

 と、夢も希望もない感想ばかりこぼした。
 そういう感想が出るということは、紫は男の人と付き合ったことがあるのかもしれない。

「紫お姉ちゃんは、彼氏いるの?」
「え?」

 読みかけのマンガを腹において、紫は苦い顔をした。

「いた、が正解」
「別れたの? なんで?」
「中学生にはまだ早い内容だから、言わない。そういや、あんた今年から受験生じゃん」
「お姉ちゃん、聞きたい! 聞かせてよぉ」

 適当にはぐらかされて、結局ことの真相は聞けなかった。
 純粋に知りたかった。
 苦い匂いのする紫の指先を、誰が、どんなふうに触れるんだろう。
 紫はお世辞なしで、カッコイイ人だ。
 だから、ドライな恋愛をするだろうと思った。
 ドライな恋愛は、よく分からないけれど。
 そう、逆の視点で言えば、イチャイチャと馴れ合うような恋愛はしないと思った。

「聞きたかったな……」

 紫は喉で低く笑った。
 男の人みたいだ。
 のそっと起きて、春乃の隣にちゃんと座った。

「バンドやってるだろ、私」
「うん」
「男装してるの。これ画像」

 携帯を取り出して、フォトフォルダを開ける。
 いくつもの写真の中に、男の人とのツーショットがあった。 彼氏だった人、かもしれない。
 カーソルが上がっていって、男の人みたいな格好をした紫がいた。

「わぁ、しっくりくるね」
「これが気に入らなかったんだと」
「彼氏?」

 答えはくれなかったけど、充分答えてもらった気がする。
 まじまじと写真を見た。
 短髪のカツラをかぶって、メンズ服を着ている。
 くわえたばこに、ビール缶を持って笑っているのが紫らしいと思った。

「女の人にモテる?」
「え、私のこと?」

 春乃がうなずくと、紫は首を鳴らして考えるように天井を眺めた。

「そこそこ?」

 曖昧な答えだった。
 でも、と春乃は思う。
 この写真の写り方のまま、紫がこんなにかっこよくて、そのハスキーボイスで歌ってくれたら、
 心臓が高鳴るかもしれない。
 藤馬の低い声を聞いたときみたいに、脳が痺れるかもしれない。

「お姉ちゃんも、マンガの男の子みたいだね」
「なんで」
「付き合えないけど……付き合いたくなる人みたいな」
「ふうん」

 うまく言葉が出てこなかった。
 はやく大人になりたい。
 もっとちゃんと伝えたいのに、思いだけが形になって、言葉が生まれない。

「お姉ちゃんみたいになりたい……余裕のある、大人の人になりたい」

 すべてを言い切る前に、階下からの声にかぶせられた。

「夢知らない? 居ないんだけど」

 春乃と紫は顔を見合わせて、下へ降りていった。







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