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すっごくRPG!!

二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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【二話】紫お姉ちゃん

 春乃の願いとは裏腹に、着せられた着物は赤ではなかった。
 黄と桃のグラデーションが鮮やかな色合い、桜の花に鞠が転がる模様。

「七五三以外で着物って売ってるもんなんだね」
「高かっただろうねぇ。 独身時代に貯めたお金、全部つぎ込んじゃって」

 祖母に帯を巻いてもらいながら、祖母の愚痴に苦笑した。
 時々バランスを崩してよろめいてしまうので、両足にぐっと力を入れた。

「もしかしたら、このためだけに貯めたんじゃない?」
「どうだかねぇ。 今時、レンタルすれば良いのにねぇ。 買っちゃって」

 どこまでいっても、祖母は着物を買ったことが気に入らないらしい。
 粉白粉を顔にのせて、母が使う紅を筆でもって唇に引く。
 目じりに軽くシャドウもつけてもらい、頬紅もつけた。

「なんだか恥ずかしいな……」
「立派立派、めんこいわぁ」

 どう言葉を返せばいいのか分からなくなり、春乃は目を伏せた。
 藤馬はこの姿を見たら、どう思うだろうか。
 想像するだけで顔が熱くなりそうだった。

「あら、玄関が騒がしくなってきたね。 佳枝子たちが来たのかね」

 よっこいしょ、と重たそうに腰を上げて、祖母は部屋から出て行った。
 畳みに置かれたままの手鏡を手に取り、そっとのぞいてみる。

「うわ……なんか……」

 恥ずかしい。
 手鏡を伏せようとずらしたところに、夢の姿が映る。
 発色のよい赤に花が咲き乱れる柄、糸のような線がゆるやかに引かれていた。
 姉が羨ましいと思う一方で、妹は表情を曇らせていた。

「なに、夢」
「……べつに」
「あ、そう」

 夢は、着物を着ているためか、静かに背を向けて歩いていった。

「なんなの……?」

 夢と入れ違うように、ゆかりが現れた。
 ふすまの柱に寄り掛かり、目を細めて春乃を見下ろした。

「うん、けっこう似合ってるじゃん」
「紫お姉ちゃん! 来てくれたんだ」
「まぁね。 母さんに出ろって言われてさ」

 紫の長く細い髪がさらさらと揺れて、白い鎖骨に流れた。
 見た目が凛として、氷みたいなイメージ。
 ハスキーボイスが、彼女をいっそう大人の女性として色づけていた。

「どれ、ちょっとポーズ決めてみ」

 ズボンのポケットから携帯を取り出して、紫は構えた。

「や、やだよぉ」
「いいから、いいから」
「……うぅ……」
「はい、ポーズ」

 ぎこちない笑顔でピースをしてみる。

――パフッ!

 変なシャッター音が鳴って、春乃は吹き出した。
 それからまたシャッター音が鳴った。
 しまった! と目を丸めたときにはもう保存されていた。

「いいね、完璧」
「もう!」
「ニセモノの笑顔はいらないんでね」

 目をきりっと細めて、紫は部屋を出て行こうとした。
 春乃は慌てて立ち上がった。

「どこ行くの!?」
「たばこ吸いに。付いて来るなよ、臭いつくから」

 ひらひらと手を振って、紫は出て行った。
 もっと話したかった。
 別に慌てて話す必要はない。
 それは分かっているのだが、久しぶりに会ったのだから、もうちょっと構ってほしかった。


 


 

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