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ひいな(下)

 すぐに飾り出すかと思い客間で待っていた春乃だったが、
 いつまで経っても来ない母親にしびれを切らせて廊下をのぞく。
 すると、母親は物置の整理を始めていた。
 こんな時じゃないと整理整とんしないから、と物置に頭を入れたまま説明された。

「ご飯食べた後に飾るから、それまで勉強してなさい」

 耳に痛い命令を聞き流して、とりあえず着替えに自室に戻った。
 渡り廊下は冷たく、ガラス戸の向こうは暗く沈んだ空が広がっていた。

 夢の声が響いてきた。
 夢のうるさい足音を背に階段を上がっていると。

「藤馬くん家に行ってきた!」と、わざわざ報告してくれた。

 春乃は手すりを強めに握って、振り返った。
 外に出かける用のおしゃれな服を着て、偉そうに胸を張る妹の姿。
 春乃は微苦笑を浮かべた。

「知ってる。手、洗っておいで」

 夢は春乃の答えが気に入らないのか、ちょっと顔をしかめて無言で洗面所へと走った。





 晩御飯のあとは、母親が行ったとおり おひな様を飾ることになった。

 ハロゲンヒーターを点けて、祖母と母親と、夢の四人で作業が始まる。
 壇が三つある雛壇を置き、赤い分厚い布を掛ける。

「おひな様は、事故や病気から子供を守ってくれるんだよ」

 祖母は朱色のふたを開けて、和紙みたいな紙をかきわけて雪洞ぼんぼり を取り出した。

「そういえば、延長コード必要だったわね」
「あ! 忘れてた。取ってきますね」

 母親が席を立ったところに、春乃は母が開けかけたふたを取った。
 ひな人形があまり好きではない夢は、春乃の背中に隠れながらダンボールの中をのぞく。
 
「怖い……」とこぼす夢に、春乃と祖母は笑った。

「怖いと思うから怖いんだよ」


 祖母は白い手袋をはめて、二人がのぞくダンボールからおだいり様を取り出す。

「家に女の子が二人いるときは、それぞれ別のものを飾るものだったんだよ」
「なんで?」
「子供の災厄の身代わりだからね。 二人分じゃ荷が重いんだろうねぇ」

 なるほど、と 春乃は祖母の冗談にくっくと笑った。
 夢は理解できていないようで、小首を傾げるだけだった。

「一つのおひな様につき、一人分の悪い運を代わりに受けてくれるんだって」

 春乃なりの解釈を 夢に聞かせると、夢はむっとした。

「じゃあこれ、お姉ちゃんのおひな様じゃん」
「二人のおひな様だよ、夢ちゃん」
「でも~」
「なかなか二人分は買えないでしょう。 高いんでしょう? ねえ、お母さん」

 ちょうど帰ってきたところの母親に尋ねると、母親は苦笑した。

「まあね。そういくつもおひな様置いたら、ちょっと不気味だし。夢なら泣いて近寄らないね」

 馬鹿にされたのが分かったのか、夢はいっそう不機嫌な顔をした。
 祖母が置いた、おだいり様とおひな様をじっと眺めて、振り返った。

「もう怖くないし!」

 はいはい、と春乃は笑って飾りを手伝い始めた。
 延長コードをさして、雪洞のコードと繋げておく。
 人形を壊すおそれのある夢は、人形に触れさせてもらえず、
 おひな様の歌を歌ってヒーターの前で寝転んでいた。

「今年は 義姉さんの家族も集まって、一緒にお祝いしようって話してるんだけど」
「そうなのかい」

 祖母と母親の会話に、春乃もわり込む。

ゆかりお姉ちゃん、来るの?」
「紫ちゃんはどうだろうね。バイトがなかったら来るかもしれないね。
 今年は二人に着物を着てもらおうと思って。紫ちゃんが着物のおさがりくれたから」
「うわ……やだよ」
「若いうちだけなんだから、着ときなさい」

 拒否権はないとばかりに強く押し切られて、春乃は引き下がった。

「佳枝子は、行事には力を入れるからねぇ」
「紫ちゃんが十四歳になるまで、事あるごとに着物 着せてたもんね。
 紫ちゃんの方が先に嫌だって怒って、着物は着なくなったみたい」


 着物を着るのは恥ずかしいけれど、和柄の美しさには心が惹かれる。
 どんな模様で、どんな色なんだろう。
 赤があったらいいな、と思う。

 着物の赤はなんとなく、大人っぽいイメージ。
 化粧はするんだろうか。
 髪も結い上げるんだろうか。

 着物を着た自分を想像して、それから――藤馬が見たらなんて言うだろうと考えた。


「あかりをつけましょ、ぼんぼりに~」

 歌も二周目をむかえたようで、夢の歌声が客間に広がった。








【一話目タイトルの「ひいな」の意味】
ひな人形のひな(ひいな)には、小さくてかわいいもの という意味が あるそうです。
今作の主人公たちに愛情をこめて、一話目のタイトルを「ひいな」にしました。



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