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ひいな(上)

 時は――立春。

 春が立つというのに、ひとたび外に出れば、肌を刺すような冷たい風が吹いていた。
 鈴村春乃はるのはマフラーを口元までたぐり寄せ、少し痛んだローファーの丸いつま先を見ながら歩いていた。

「寒い……」
 
 隣に並んで歩く大谷藤馬とうまは、声変わりを終えた低い声で呟いた。
 近所に住んでおり、母親同士の仲が良く、その繋がりで春乃と藤馬もよく遊んでいた。
 お互いに、同じ年の妹を持っているために、中学に上がっても何だかんだで付き合いがあった。
 
 友達と別れて一人で帰る道で、藤馬はよく声をかけてくれる。
 今日みたいに。

 中学に上がると妙な気恥ずかしさがあって、学校ではあまり話しかけられないけれど、
 本当は小学校の頃のように、当たり前に声をかけて一緒に帰りたかった。

 だから、嬉しい。
 直接、言葉で伝えられないのは、自分が十四歳という子供で、恥ずかしがり屋だから。

 並んで歩いているとき、話の口火を切るのは いつも藤馬だった。

「今年から受験生だね」
「実感ないよね」
「うん。 ……そうだ、志望校決まったら教えてよ」


 春乃は頬が熱くなる思いで、「うん」と答えた。
 もしかしたら同じ高校に通える気がして、期待に胸が膨らんだ。

 藤馬の方が先に家に着く。
 それじゃあ、と片手を挙げて別れて、一人で歩く。

 鈴村家は(父方の)祖父母の住む母屋と、渡り廊下を隔てて、両親と住む新築の家、という構造。
 元は祖父母の家の庭だったのだが、広すぎる庭を持て余していたため家を建てたのだった。
 春乃が二歳の頃の話で、当時のことはあまり覚えていない。
 

 玄関を入れば、新築の香りも薄まってしまって、今では鈴村の香りが迎えてくれる。

「ただいま~」

 声は返ってこなかった。
 不思議に思いつつも手洗いとうがいを済ませ、セーラー服のまま母屋へ向かった。

「お母さん?」
「あら、お帰り」


 母屋の廊下にある物置から、母親が顔を出す。
 そばには積み上げられたいくつものダンボール。
 朱色が鮮やかな和柄のふたを眺めながら、母親のそばに寄った。

「なにしてるの?」
「おひな様出してるの」
「もう!?」

 昨日、節分したところなのに、もう次の行事に取り掛かるなんて。
 呆気に取られる春乃に母親は笑った。

「節分で悪い気をはらって、春を迎える。そういう流れなのよ」
「ふうん」
「詳しいことはおじいちゃんとおばあちゃんに訊いてみなさい」
「別にいいかな……」
「たまには二人の話し相手になってやんなさいって」
「んー」

 渋々とうなずいた。
 今日の晩御飯のあとにでも訊いてみよう。
 その時は妹のゆめも連れて行こうか、と思ってふと夢が居なかったことに気付く。


「夢は?」
「藤馬くん。 都子みやこちゃんと遊んでくるって」
「へえ。 寒いのに元気だね……」
「そうだそうだ。 あんた、インフルエンザに気をつけなさいよ。流行ってるって」

 そんなもの、どうやって気をつければいいんだろう。
 教室の生ぬるい空気を思い出して、ため息をついた。
 あんな閉鎖的な空間に押し込められたら、手洗いうがいをやったって、かかるときは かかる。

「はい、これ」
「うん」

 突き出されたダンボールを反射で受け取ってしまう。

 ダンボールを母屋の客間に運ぶよう言われて、一つずつ運んでいく。
 重いものから軽いもの。
 いったい何が入っているのか。
 いつも祖母と母親に任せきりで、手伝ったことがない。
 今年はせっかくだし手伝おうと思った。






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*Comment

 

こんばんは(^o^)丿

新作開始&更新お疲れさまです♪

春乃さんと籐馬くん。
名前が素敵ですね!
幼馴染って近くて遠いので、ちょっとドキドキします。
田舎だったので私のひな人形、7段もある大きいものでした。
そして弟が二人いたので、リアル階段扱いになり、かなり悲惨な状況に(笑)
でも毎年、飾っていた気がします。
家族全員でああだこうだと言いながら、組み立てていくのも楽しかったです。
雛祭りらしいお祭りはできませんでしたけどね(^^;

日本の行事って、風雅で好きです♪
楽しみにしていますね♪


  • posted by 椿 
  • URL 
  • 2013.02/09 00:07分 
  • [Edit]

Re: 椿さんへ 

こんばんは!
訪問、コメントありがとうございます。
新作スタートしちゃいました。やはり行事には便乗したくなります(苦笑)
どうしても、和風テイストの作品が書きたかったというのもありますが。

名前を褒めて頂けて、とても嬉しいです。
悩んだかいがありました!w

椿さんの家は七段なんですね、すごいですね!
弟さんが階段にしたくなる気持ち、分からなくもないです(笑)
我が家では、内裏壇しかなくコンパクトでした。
七段は憧れます、圧巻だろうなぁ^^

私も日本の行事好きです♪ そして京都に行きたくなるw

それでは、またお気軽にお越しください!!
ありがとうございました。
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.02/09 01:21分 
  • [Edit]

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