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【恋愛SS】 恋式×数学=先生

「まったく……」

 女子高校生をしている私は、自分の机の上に広がる問題集にうんざりしていた。
 そして、私以外にももう一人うんざりしている人が、黒板の前にいる。
 数学の教科担任、相沢 宗吾(あいざわ そうご) 、噂では三十歳。

「君は何度、私の補習を受けたいんだ?」
「私も補習は受けたくないんですよ。 これでも全力投球したつもりです」

 高校一年生から、三年生になった今までずっと相沢センセのお世話になっている――補習で。
 補習は一週間、毎日放課後に残って三十分の勉強をする。
 もしくはプリント五枚を家に帰ってこなし、翌朝に提出するか。

 私は前者を採った。
 なぜ? 簡単な話だ。 三十分耐えた方がよっぽど楽だと判断したからだ。
 高校一年生の時にね。

 私と相沢センセと一緒にいる時間は、周りの生徒たちと比べると多いと思う。
 絆……はないかもしれないけれど。仲は良いと思う。

「あと三ヶ月で受験本番なんだぞ」
「そうなんですよねぇ」
「他教科は90点以上を維持できて、なぜ数学だけは平均点以下なんだ」

 相沢センセは、眼鏡の奥の瞳を揺らして私を見る。
 あらあら、ショックを受けていらっしゃる。

「私の教え方がいけないのか? これでも、多くの生徒には分かり易いと評判なんだが」
「性格の不一致ですね」
「なるほど、了解した。君の語彙力と態度にはいつも感心する」
「模試で国語だけは100点取りましたからねぇ」

 ふん、と相沢センセが鼻を鳴らす。
 小賢しいと目が言っている。

 つい揚げ足を取ってしまう。 どうにも私は、先生という生き物が嫌いだった。
 むだに牙を剥いて困らせてしまう。
 
 いや、先生という生き物というより、大人という生き物が嫌いなんだ。
 賢くなればなるほど、大人の汚い部分を知っていく。
 子供には色々と押し付けるくせに、自分たちだけ、もっともらしい顔をして威張り散らす。
 
 世知辛いね、まったく。


「私語は慎み、そのプリントをやりなさい」
「ギャフン」
「その死語ではない」
「あら、通じたの。意外でした。さて、やりますかね」

 サイン・コサイン・タンジェント。 素敵な呪文ですね。
 開始早々、私がこんなことを言うものだから、
 センセはがっくり肩を落として黒板に白チョークを滑らせていく。


 冷たい印象を与えるセンセだから、生徒からは怖がられている。
 廊下を走れば相沢センセの一喝が飛んでくる。
 けっこう面倒見の良い、熱血先生だとは思うんだけどなぁ。

「相沢センセは、もったいない人間ですねぇ」
「ほう」
「あら、怒られると思っていたんですけど」
「興味がある。もったいない人間とは」

 補習のたびに、私とセンセはこういう議論を展開する。
 真面目に勉強しろよと思われるかもしれないが、大丈夫。
 私、優秀ですから。
 その時だけ、解法を理解してあっという間に解けるのだ。 その時だけ、ね。

 私はセンセが書いた解法をなぞり、プリントの問題を解きつつ続けた。

「センセは、とてもいい先生だと思いますよ。 
 私が好ましいと思う程度には、きっちりかっちり先生ですよ。
 そうですねぇ、例えるなら自然と、センセ様と頭が下がっちゃうような。
 孟子、孔子、白居易うんぬん……ありがたや。

 でも、センセは隙がないから仲良く出来ないんですよ。
 いつも怒った顔をしているから、良い先生だとは思ってもらえないんです。
 こんなに良いセンセなのに、好かれないのはもったいないですよ。菅原道真なみにもったいない」


 相沢センセは考え込むように腕を組み、教卓の付属のイスに腰掛けた。


「ならば、私はどうすれば良い」
「そのままで良いと思いますよ」

 だろうな、とセンセは笑った。 相沢センセに落ち度はない。
 結局、意味もない議論となった。

 
 センセと話せれば、それでいい。
 あと少しで私とセンセは「さよなら」をして「赤の他人」になってしまうのだから。
 くだらない議論で思い出を作れれば、それでいいのだ。


「センセ。私はね、思うんですよ。 都合の良い先生は要らないって。
 そこらの生徒は「都合の良い」先生を「良い」先生と言うんですよ。
 それなら相沢センセには嫌な先生で居てくれた方が、よっぽど社会貢献できると思うんですよ」

 問題を全部解いて、センセに手渡す。
 センセは丸つけ専用赤ペンのキャップを取って、それから言った。

「君は、他の生徒とは違う視点を持っているんだな。いつも感心する。口の利き方はなっていないが」

 しゅっ、しゅっ。 丸がつけられていく音を聞きながら、私は言葉を返した。

「それは致し方ありません。 私が優秀すぎるが故です。
 本音では、ほとんどの先生を見下してますからね。
 でも、相沢センセは違います。 孔子ですからね、一生教えを乞いたいとさえ思います」

 シュッ! はねられた。 あら、不正解だったのね。
 あとはすべて正解だったのに、コレだけはバツをつけられた。

「これだから数学は嫌いなんです。 センセが数学の教師じゃなかったら、一生教えを乞えたんだわ」
「どうだろうな」

 私は、目を伏せた。
 どうだろうな。 確かに。 一回り年上の時点で、終わっていたのかもしれない。

「センセ、私、わざと悪い点数を取っていたわけじゃないんですよ。
 別に都合をつけて、センセと一緒に居たわけじゃありません。
 でもね、センセ。 私はどうにもセンセが好きだったようです」

 言ってしまった。
 不思議と、後味の悪さはこなかった。
 相沢センセは渋い顔をして、目を逸らした。

「私は、君の気持ちには応えられない」
「あら、知ってますよ。それくらい。応えたら、センセを見損ないますよ」


 私は微笑んで、バツをつけられた問題を解き直す。
 良かったと思った。
 センセはどこまでも真っ直ぐで、理想の人だった。
 

「一言、良いか」
「なんでしょう」

 解き直した問題には、二重丸がつけられた。

「ただ、君との補習がこれきりだと思うと……寂しく思う。
 テストを迎えるたびに君を思い出し、
 この教室の、この温かな空気のなかで一人、君の姿を探すだろう」

 息が止まる。
 なにかが込み上げてくる。
 ぐっとそれを押し殺して、私はうつむいた。

「センセ、それは一言とはいえないのでは」
「まったく……君には敵わない」
「私っ……ゆう、しゅ、ですから……っ」

 私もきっと忘れないだろう。
 この教室の、この温かな空気と相沢宗吾という男を……。
 一生、忘れない。










ありがとうございました & お疲れ様でした

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*Comment

No title 

こんばんは^^
"私"ちゃんの飄々とした喋りがなんだかツボに嵌ってつい噴き出し、二人の本心にはついニマニマしてしまいました。
(でもちょっと切ない…だがそれがいい)
個人的にはこの話すごく好きです。
  • posted by 木彫 
  • URL 
  • 2013.03/20 21:59分 
  • [Edit]

Re: 木彫さんへ 

こんばんは!^^
訪問、そしてコメントありがとうございます><

嬉しい感想に飛び上がってしまいそうっ!
楽しんで頂けてなによりです。
後味が悪い結末と思われたらどうしようと思っていたのですが、気に入っていただけたようで嬉しいです!!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.03/20 23:06分 
  • [Edit]

こんにちは。 

こんにちは。(・∀・) ←昨日コメントの返信を頂いたので堂々と出てきました(笑)

>「私は、君の気持ちには応えられない」
>「あら、知ってますよ。それくらい。応えたら、センセを見損ないますよ」
ここのクダリが好きです。
変に恋愛に発展するんじゃなくて、
主人公の「理想の人」であり続けた先生。
そして、先生からの一言とは言えない一言。
切ないけど、主人公も、先生も
きっとお互いずっと忘れられない人になるんだろうなと
思いました。
  • posted by Sha-La 
  • URL 
  • 2013.06/03 06:21分 
  • [Edit]

Re: Sha-La さんへ 

こんばんは^^
訪問、そしてコメントありがとうございます。
とても嬉しいです♪

『恋式×数学=先生』を気に入って頂けて幸せです。
成就しない恋を、辛い心情とかは無しに
キレイな思い出として描きたかったんです。

結果として、少し後味が悪い印象を
与えるのではと思っていたのですが杞憂だったようです。
ほっとしております(笑)
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.06/03 21:02分 
  • [Edit]

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