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【恋愛SS】 春の鈴虫

 春の空気は苦手だった。
 新しいことに挑戦しようっていう、人間の、すごく綺麗な部分を見せ付けられてしまって。私はこんなに汚れていて、ちゃんとした人間として生きるなんて気力はとうに失せてしまっているのに。
 
 どうして私の目の前で、私以外の人はキラキラ輝いているのだろう。
 
 私だけが、どうしてこんなんなのだろう。
 どうしてこんな、汚れちゃったんだろう。

「なにそれ」

 私のお友達の、カナエちゃんは、白い歯をちらりと見せて笑った。
 メランコリックな私を笑えるのは、きっと今も、これからも、カナエちゃんしかいない。

「彼氏と別れたくらいで」
「カナエちゃんは、男の人を知らないから言えるのよ」

 カナエちゃんは、私の言いたいことを理解した。
 理解したからうっと顔をしかめた。 引いた顔をした。
 カナエちゃんはまだ知らない。男の人の香りも、筋肉も、怖い部分も。

「これで何人目?」
「五人……くらい」
「忘れ去られた男が気の毒だわ」

 カナエちゃんは容赦ない。
 知ってるの。
 カナエちゃんは、私を軽蔑している。 清々しいほど鋭い眼で、私を見ている。
 私が離れていったくらいじゃカナエちゃんは傷つかない。

 だから、平然と痛いことを言ってくる。

「ちゃんと好きだったもん」

 私は傷つきたい時には決まってカナエちゃんに失恋話をする。
 悲劇のお姫様のように自分を着飾って、いかに哀れかをおおげさに話して、
 ――カナエちゃんの毒刃に掛かりたくなる。

 それに、優越感に浸れる。
 美人なカナエちゃんよりも、ずっとモテるんだよって。

「アンタも大概よね。 ダメ男って分かっているのに。 そうね、食虫植物に引っかかるハエみたい」

 ハエ……。

「それ、可愛くない」
「蝶々になりたかったら、男に近づくんじゃないの」
「でもそれじゃあ、恋は出来ないよ」
「しばらくしなきゃ良いのよ」

 カナエちゃんは足を組み、長い指でタバコを挟んで、ゆっくりと唇に寄せていく。
 大人だなぁと思った。
 その、大人の乾いた唇が男の人のものだったら、私はきっと恋をしている。
 
 だから、カナエちゃんが女で良かった。
 カナエちゃんが男だったら、また貢いで、
 好きになってもらおうと努力して、勝手に傷ついて終わるところだった。

 そして、傷ついた私を介抱してくれる人が居なくなってしまう。

「カナエちゃん」
「なに?」
「合コンしたい」
「懲りもせずに、よくもまぁ」


 バカじゃないの。
 言いながらも、カナエちゃんはどうしようかと考えてくれていた。
 
 時々、道を踏み外しそうになる私を、カナエちゃんは引き戻してくれる。
 腕に爪を立てて、容赦ない罵倒を浴びせて、それでも手を放さずにいてくれる。
 だから、私は蜜の匂いがする男の所へ安心して飛んでいけるんだ。
 
 私はカナエちゃんの優しさにどこまでも甘える。

「カナエちゃんも良い人、見つかるといいねぇ」
「バカな友達が居るから、そのバカが幸せになってから考える」
「幸せに、なれるかな」
「どうかしらね。もしかしたら、一生バカなままかも」

 タバコを灰皿に捻ってこすり消した。
 消されたタバコの香りは、男の人の匂いと一緒だった。
 あぁ、飢えている。

 ハエ、かぁ。
 それもあながち外れてはいないかもしれない。

 ずっと飢えているから、食虫植物に引き寄せられちゃうのかもしれない。

「カナエちゃんなら、どんな虫になりたい?」

 突飛な質問に、カナエちゃんは目を丸めて、それから喉で笑った。

「鈴虫」
「鈴虫? なんでなんで?」

 カナエちゃんは答えなかった。
 美人なのに、そんな虫だともったいない。
 だって鈴虫はうるさいから、遠くで鳴いているだけで、すぐに鈴虫って分かるから。

 鈴虫だったら、すぐに、どこに居るか分かってしまうよ。

「いいのよ、それで。いいの」

 気取った風でもなく、カナエちゃんは笑った。
 







ありがとうございました & お疲れ様でした

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