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レディ・バレンタインのその先へ…

――……こうして、サラはヴァイオリンを置くことになった。
しかし、彼女は誰も知らないところで決意していた。
どれほど時間が掛かろうとも、いつか必ずヴァイオリンをこの手に持つと。
プロになれなくたって良い。ただ、ひたすらに音楽と共にあろうと思った。
サラは歩き出す。
ゆっくりと、夢見る世界へ近づくために。




読了後の、このぼうっとした感覚はいつぶりだろう。
書き並べられた文章を愛しく思い、指先で撫でる。

急に、ノックも無しにガチャリと部屋が開けられた。
驚いて、すぐに振り返る。
ノックがないのは当たり前だった――ここは自分の部屋じゃない。

この部屋の持ち主は、当人以上に驚いて固まった。

「なに、してるの……お姉ちゃん」

目を丸めて立ち尽くす妹に、シェロームは微苦笑を浮かべた。

「おかえりなさい」

バレンタインは、シェロームの手元にあるノートを見て青ざめた。

「見た、の? 見たの!?」

青ざめていた顔が、すぐに真っ赤になる。
バレンタインは小さく悲鳴を上げながら、ノートを強引にとって腕に抱いた。
怒られた子供のように泣きそうな顔をして、一方でとても怒っているようだった。

「どうして見たの、なんで勝手に見たの!!」
「ごめんね。父さんと母さんから、頼まれていたの。
 最近、バレンタインが家でヴァイオリンを練習しないって。
 原因を確かめて欲しいって頼まれていたのよ。あなたにとって、今が大事な時期だから」
「自分のことは自分で出来るわ」
「バレンタイン」
「いや! なにも聞きたくない!」

涙を浮かべながら抗議する妹を、シェロームは苦笑を深めて見上げた。
いつからこんなに心の距離が空いてしまったのかしら。
自分がプロになってから? それとも、この子が小説を書くようになってから?

理由はいくつも思いつくけれど、バレンタインが悩んでいるなら一緒に解決したいと思った。
物語の端々から、彼女の苦悩が見え隠れしていた。
これを見逃してしまったら、きっと妹をダメにしてしまう。
欲しくても手に入れられなかった、焦がれて止まない、しかし、彼女の大切な能力を腐らせてしまう。

「バレンタイン」
「いやだ……あっち行ってよ。聞きたくない!」
「素敵なお話だったよ、とても良かった。よく頑張って書いたわね」

姉の言葉に、バレンタインは意外なほど唖然としていた。
どうして? そんな声が聞こえてきそうだった。

「小説家になりたかったの?」
「いつかは……なりたいって思ってた」
「両方目指しても良いんじゃないかな」
「え? ええ!?」
「どうして驚くの? ふふっ、そりゃねえ、今は音楽の方に集中してくれると良いんだけど。
 んーん、むしろ集中して欲しいの。今のバレンタインに必要なのは技術だから」

シェロームは、怯えるバレンタインにそっと手を伸ばして触れた。

「父さんと母さんが、バレンタインに期待するのは豊かな感性を持っているからだった。
 自由で豊かなその表現力と感性に、父さんたちは惚れ込んでいるのよ。
 ……表現だけは、誰にも真似が出来ないと思う。プロである私も、あなたをコピーすることはできない。
 私がずっと望み手に入れたかった、その才能を腐らせてはダメよ」
「そんなことない! 私なんか……私なんか。お姉ちゃんの方がずっと!!」

自分の才能に気付かないせいで、伸びる時期に伸びていかないんだ。
これほど勿体ないことはない。

「バレンタイン、今を逃してはいけないわ。
 あなたは今まさに成長期にある。なにからも縛られない自由な時期にあるの。
 それを無駄にしてはダメ。
 小説を書き続けなさい、そして知識を身に着け、感性を磨いて、豊かな心を育みなさい。
 バレンタインがしてきたことはきっと無駄じゃない。誰も咎めたりはしないわ。
 ……自分の才能を認めてあげて。自分を認めてあげなさい、バレンタイン」

バレンタインは、考え込むようにうつむいた。

「自分を、認める……」

考える時間が必要だろう。
シェロームはバレンタインの頭を撫で、それから部屋を出ようとした。

「お姉ちゃん」
「ん?」
「今日ね、グループテストで四重奏をやったの。
 私、このグループテストで嫌いだったヴァイオリンが好きになれたの。
 初めて……音楽で人を幸せにしてみたいって思ったの……。私に、できるかな。遅くないかな」

シェロームは微笑んで、言った。

「Andante」
「え?」
「ゆっくりと、それでも着実に。遅いなんて無いわ、歩みを止めない限りね」

ふふっ、といつものように笑ってシェロームは踵を返した。

「お姉ちゃんが私のお姉ちゃんで良かった!」

階段を降りていくシェロームの頭上から、そんな声が振ってきた。
シェロームは一度立ち止まり、横顔を見せる。

「励みなさい、永遠のライバルよ!」
「ま、負けないから!」


それから、バレンタインは筆を置くことになった。
時間があれば小説を書いていたが、前よりは優先順位は低くなっていた。
しかし今でも、バレンタインのなかで小説家になるという情熱は消えていなかった。
どれほど時間が掛かろうとも、いつか必ず素晴らしい作品を書き上げる。


私ならきっと大丈夫。


Andante――それは、人が夢へと歩む音。






最後までお付き合い頂き、ありがとうございました&お疲れ様でした
ようやく完結いたしました。
応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
そして、ここまで読んで下さった方には心より感謝しています。
これからも別の作品で応援、そして見守ってくださると嬉しいです。

長かったですよね、本当にお疲れ様でした。



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*Comment

 

お疲れさまです!
お疲れさまです、そして完結おめでとうございます(>▽<)♥

涙でウルッとしてしまいました!
自分で自分を認めることってとっても難しい。
姉妹っていいなぁ~勝手に小説を読むところが姉らしいけどw

遅いなんてないわ、という言葉に込められた思いの深さに、胸がいっぱいです。
ゆっくりでも確実に。
すべての基本だけど、私はすぐに気ばっかり焦るので(^^;;

とても楽しくて素敵な時間をありがとうございました!!
再びになりますが、完結おめでとうございます(^^b
バレンタインたちとのお別れはさみしいけれど、彼女たちの未来がキラキラした希望にあふれたものだと信じられます❤
お疲れさまでした~❤
  • posted by 椿 
  • URL 
  • 2013.01/27 08:02分 
  • [Edit]

Re: 椿さんへ 

こんにちは。
コメントありがとうございます!

> お疲れさまです、そして完結おめでとうございます(>▽<)♥
最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございます!

> 涙でウルッとしてしまいました!
> 自分で自分を認めることってとっても難しい。
> 姉妹っていいなぁ~勝手に小説を読むところが姉らしいけどw
ウルッとしてしまいましたか。照れますね、ありがとうございます^^
バレンタインがノートを隠す=バレる。 最初からフラグは立っていましたね(笑)
エルバにバレるか、シェロームにバレるかで悩んだのですが・・・。
やっぱり人生の先輩が良いかと思って、シェロームにしました(裏話)


> 遅いなんてないわ、という言葉に込められた思いの深さに、胸がいっぱいです。
> ゆっくりでも確実に。
> すべての基本だけど、私はすぐに気ばっかり焦るので(^^;;
私はむしろのん気過ぎて心配されます('・c_・` ;)
『Andante』はゆっくりと歩けばいいさ、というメッセージの反面「歩みを止めるな!」という強いメッセージもあります。立ち止まったら、身動きが取れなくなるかもしれないので。


こちらこそ、ありがとうございます。
最後まで読んで頂けて、本当に嬉しいです。
また椿さんの小説を読みに行きますね^^
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.01/27 15:22分 
  • [Edit]

No title 

うん、面白かった!
しっかりメッセージが貫き通されてるし、いろんな要素があって楽しめました。
それになんといっても読みやすい!これは大きいです。
文章の面から見ればテンポいいし難しすぎないし、想像力をかきたてる余地を残しながらも場面がクリアに伝わってくる。
あとは、ネット上で読むことへの負担を減らす工夫も凝らされていて、長いとも感じなかったしうまいなぁと思いました。
いやもう、勉強させられることばかりで、お話自体も面白いし、素敵な作品に出会えたなぁという幸福感でいっぱいです(*^^*)
エルバと結ばれて良かった良かったですが、個人的にはラウルを選んでみた時の展開を期待しました(笑)←物好き
とにかく、連載お疲れ様でした!
また別のお話も読んでみますね。
  • posted by るる 
  • URL 
  • 2013.02/16 10:09分 
  • [Edit]

Re: るるさんへ 

コメントありがとうございます。
そして、最後まで読んで頂けて本当に嬉しいです!!
自信が持てそうです^^
読者が疲れないように、というのはとても意識した点です。
なので、そう言って頂けると、ちゃんと成功したんだなと実感できます。

見切り発車で始まった物語だったんですが、なんとか修正しつつ頑張って書き終えました。
本当はもっと細かく描写したり、ストーリーを練るべきなんだろうな、と反省もしております。
ただ、展開が遅いと飽きられてしまう可能性があったので、
できるだけ「一場面」を延ばさず一ページで終わらせようと意識しました。

ラウルもなぁ、バレンタインとくっつけたかったんですが(笑)
ここまで延ばしてどっちつかずはないか~と思い、当初の予定通りエルバにしました。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
長かったですよね。お疲れ様でした。
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.02/16 14:14分 
  • [Edit]

No title 

初めまして、いつもご訪問ありがとうございます^^
結構前からちまちまと読み進め、ようやく読み終わりました。
(ちなみに話が長いとかではなく、単純にこちらの時間が無さすぎただけですのであまりお気になさらず。文章としてはむしろ読みやすかったです。)
Andante、良い言葉ですね~。響きも良いですし;

> 『Andante』はゆっくりと歩けばいいさ、~
なるほど、そういう意味にもとれますね。
我ながら通り一遍の読解力しかなくて嫌になります…;

そんな残念な読解力の人間ですが、せっかくなので、近々うちのブログの方で感想でも載せようかなと考えています。(もし不都合等ありましたらお手数ですがご一報下さい)

何はともあれ、連載お疲れ様でした。
時間がとれたら、また他の作品も読んでみますね。
  • posted by 木彫 
  • URL 
  • 2013.02/16 22:48分 
  • [Edit]

Re: 木彫さんへ 

初めまして、こんばんは!
こちらこそ訪問ありがとうございます^^
コメントまで頂いて、嬉しい限りです。

いえいえ、読むのは大変でしたでしょう(汗)
読みやすさ、見やすさ重視にしたかったので、描写に力は入れませんでした。
ありきたりな表現ばかりが続いた点は、ちょっと反省しております(笑)

感想を載せてくださるとは! 恐縮です。
数ある作品の中から『Andante』を読んで頂けただけでも嬉しいのに。
ぜひお願いします><

本当に最後までお疲れ様でした。
改めてありがとうございました!!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.02/16 23:50分 
  • [Edit]

素晴らしいですv 

こんにちは~!
また携帯からすみません~(^_^;)
目が離せず、ついつい最後まで一気に読んでしまいましたv
エルバ頑張ったなぁ~!
中庭のお話で、バレンタインの「あなたがそうだったら…」って言われて彼は凄く嬉しかったと思います!
きっとバレンタインなら小説もヴァイオリンも続けていけますよb
エルバは小説の事を知らないので後日談で「実は図書館にいた理由はね…」なんて展開になってくれると嬉しいな~(≧∇≦)
きっとエルバならバレンタインを応援してくれると思いますしb

今作もとても読みやすくて、素敵なお話でした!
私まで何だか幸せな気分ですよ~v
これからも素敵なお話、楽しみにしています(*^o^*)

  • posted by Hukuya 
  • URL 
  • 2013.06/04 17:13分 
  • [Edit]

Re: Hukuyaさんへ 

こんばんは!
訪問、コメントありがとうございます!
お返事が遅くなり、申し訳ないです。

> 目が離せず、ついつい最後まで一気に読んでしまいましたv
お疲れではないでしょうか?
ありがとうございます( ´ ▽ ` )
楽しんで頂けて、とっても嬉しいです。
まだまだ未熟ですが、ブログを通して
技術を、高めていけたらと思います!
頑張ります(^-^)/
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.06/07 22:01分 
  • [Edit]

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