FC2ブログ

すっごくRPG!!

二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

Entries

レディ・バレンタインと優しい魔法使い

「ねぇ、この曲……こんなに迫力あったっけ」

女子生徒は隣の男子に問いかけた。
バレンタインをいつもライバル視していた彼は、目を細めてバレンタインを見つめていた。

「違う。肌に直接触れるほどの近さで聴いたことが無かったからだ」

有名で演奏の難しい曲ならオーケストラでいくつも聴いてきた。
だが、初心者向けとされる四重奏を学生が目を向けるはずも無く、楽譜だけ知っている程度だった。
ククリ集と聞いて侮っていた。
偉大なる作曲者の作る音楽は、いつだって音楽に誠実で、馬鹿にできないものだったのだ。

ククリ集を出してきたバレンタインの思考が理解できなかった。
そう、バレンタインの考えていることなど、いつも分からなかった。
なにも考えてなさそうだからこそ、超えられる存在だと思っていたのに。

「向き合ってなかったのは、俺の方なのか?」
「技術だけなら、バッズの方が」

睨まれて、女子は沈黙した。

「まだ分からない。曲が曲だからな……。まだ認めてやらねー。
 学内コンクールで白黒はっきりさせる。絶対にあいつを超える」

バッズは優雅に弾きこなすバレンタインを鋭い目で見つめた。





授業が終わり、バレンタインはほっと息をついた。
成績は来週の授業で発表されるとのことで、まだ安心はできないのだが。

「どうよ、手ごたえは」

ユリがバレンタインの背を叩き、バレンタインはうなずいた。

「まずまずじゃないかな。練習通り行けたと思うんだ。
 曲レベルで点数は下がるかもしれないけど、技術点ならそこそこ取れるんじゃないかなとは思ってる。
 ……フィオン先生なら、的確な点数をつけてくれると思うよ」

エルバを探していると、エルバはもう彼らと対峙していた。
バレンタインは怯えながらも、エルバの隣にそっと立って、バッズを見上げた。
エルバが一歩前に出る。

「どうだった?」
「ふん! あの程度の曲なら、時間さえあればいくらでも高められるだろうよ」
「負け惜しみか」
「まさか。……でも、そうだな」

バッズはバレンタインを見下ろした。

「確かに驚いたよ。圧倒された。だから前のことは無かったことにする、それが約束だからな」
「あ、いえ……その……はい」
「でも、お前を認めたわけじゃない」
「え!? あの……でも」
「学内コンクールに出ろ。それで決着をつける」

バッズを筆頭として、生徒たちがぞろぞろと教室から出て行った。
ユリとロイは顔を見合わせた。

「結局、一方的だったね」
「謝りもしないなんて、嫌な奴! キー!!」

エルバはバレンタインを見た。

「どうするんだ? 出るのか」
「……そうだね……まだ決めかねるけど……」
「俺は出るよ。ラウルを超えるのが俺の目標だからな。ロイ、お前もだろ?」
「え? うーん、まぁそうだね」
「なんだよ釈然としない答え方だな」
「うん……あはは、ね」

歯切れの悪い言葉に、バレンタインは首をかしげた。
もしかしたら、ロイとラウルの間にもなにかがあるのかもしれない。
そして、エルバもそれに絡んでいる、のかも。
そのことに首を突っ込むつもりはないけれど、学内コンクールで決着がつくのかもしれない。

「学内コンクールに出るにも、また選考を受けなきゃならないんだ。
 悩んでる暇なんて無いぞ。さっさと課題曲を仕上げないとならないんだからな」

エルバに言われて、ロイとバレンタインは苦笑した。

バレンタインは三人を眺めながら、思う。

音楽は、人を惑わせる。
競って、亀裂を生んで、迷わせて。
でも、幸せも楽しさも与えてくれる。
良くも悪くも、本当に魔法みたいだった。

でも、もし音楽の道に進むなら――良い魔法使いになりたいと思った。
人を幸せに出来るような、優しい魔法使いに。

「バレンタイン、教室に戻るぞ!」
「はい!」







ありがとうございました&お疲れ様でした

  クリックしてくださると励みになります

前へ ≪ブログトップへ戻る≫  第49話 レディ・バレンタインの唯一の人
スポンサーサイト

*Comment

 

こんばんは!
更新お疲れさまです( ^^) _旦~~

そうです。基礎を侮ってはいけないのです!
そして、基礎曲ほど演奏者の想いの表現を試されると思うのです。
思わず何度も読み返してしまいましたw

そして、ここにきてバッズ君のツンツンがww
好きな子のスカートめくりをするイケナイ子の匂いが(//▽//)←オイ

丁寧に描かれている人間模様からも目が離せませんね!
みんなまっすぐに自分を生きているので、応援したくなります。
続きも楽しみにしています♪
  • posted by 椿 
  • URL 
  • 2013.01/22 23:50分 
  • [Edit]

Re: 椿さんへ 

こんばんは!
訪問&コメントありがとうございます!!

ご感想通りです。
バッズは当初から、ツンデレキャラ確定でした(笑)
バレンタインが気になって気になって、気になりすぎてライバル視してしまうんです。子供か!w

コメントにいつも支えられております。
投げ出さずにいられたのも、読んでくれる人がいると分かるからでした。
本当にありがとうございます。
『Andante』も、本当にあと少しです。
どうか最後まで見守っていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします!!
  • posted by デジャヴ 
  • URL 
  • 2013.01/23 00:44分 
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

カウンター

ブログランキング

にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ  

FC2Blog Ranking

ワンクリックで応援お願いします!

最新記事

プロフィール

デジャヴ

Author:デジャヴ


二次創作小説・オリジナルファンタジー小説を書いています。訪問して下さった皆様に少しでも楽しんでいただけると幸いです。

恋愛小説サイト『恋砂糖*ひと匙』も運営中


【補足と注意】

・過度な性描写・暴力シーンはありません。

・原作キャラでの同性愛は一切書きません。

・コメント、感想はありがたく頂戴いたします。誹謗中傷やマナーのないコメントは受け付けません。

・当ブログを利用するにあたり、一切の責任は負いかねます。あらかじめご了承ください。

・小説、イラストともに転載・複写×
著作権は放棄しておりません!

以上の点をご理解いただけますことを心よりお願い申し上げます。まだまだ不慣れですが、温かく見守っていただけると幸いです。

右サイドメニュー