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レディ・バレンタインと楽譜に込められた想い

「それは」とバレンタインが言った時だった――。

図書館に届く、音。

中庭から流れてくるメロディー。

三人はそれぞれ目をみはった。

(うそ……エルバ君じゃなかったの)

バレンタインは席を立ち、いつもの奥の書架へと走った。
窓を開け放ち、桟に手をついて身を乗り出した。
バレンタインの金髪が、吹きつける風になびいた。

その風に乗って流れてくるのは、哀愁漂う恋の曲。

中庭の大きな木の下、ヴァイオリンを弾く赤毛の男子がいた。
木の葉がこすれてざわめくなか、彼の真っ直ぐな音色が鼓膜に届く。
研ぎ澄まされた心地よい音。
すぅーっと心に涼しい風が吹き込むような、冴えきったヴァイオリンの音色。

中庭の彼はバレンタインが見ていることに気付き、それでも演奏する手は止めなかった。
驚いた様子もなく、少しの乱れもなく弾きこなす。

やがて、彼はヴァイオリンをケースにしまった。
夢心地の中から、バレンタインははっと我に返った。
赤毛の男子は図書館の窓辺まで寄ってくると、バレンタインと対面した。

「やっと、気付いてくれたんだね」

バレンタインは赤毛の男子を見上げた。

「ずっと、弾いてくれていたの」
「うん」
「でも私……まったく気付くことができなくて」

赤毛の男子は怒ることも、悲しむこともせず、柔らかな表情でうなずいた。

「知ってるよ。いつも真剣な顔をして、机に向かっていたから」
「見ていたの」
「いつも見ていたよ。見ているしか、できなかったんだ。
 君が、陰口を言われたあの日も。
 声を掛けようかどうしようか迷って、悩んでいるうちに君は行ってしまった。
 ごめんね。君がどれほど悲しんだか、傷ついたか見ていたのに」

赤毛の男子は苦笑して続けた。

「それで気付いたんだ。俺にとってのバレンタイン・ヴァスタは憧れでしかなかったんだって」

どんな曲でも簡単に弾きこなしてしまう才能への憧れ、有名な両親を持つという立場への憧れ。
いつだって先生に褒められ、みんなの注目の的になっている、その存在感への憧れ。
 
「君の彼氏になったら、その総ての憧れを手にすることができると思っていたんだ。
 そう……俺のこの想いは、恋じゃなかった。
 恋だったら、エルバ・ローウェンのように彼らに抗議することだって出来たはずだった。
 だから、中庭で弾くことをやめたんだ」

だけど、と強い調子で彼は付け加えた。

「やっぱり、憧れの中にも、君を好きだと想う気持ちもあった。
 諦めきれない自分がいたんだ。
 それで今日、ここに立った。
 今日で最後にしようと思ったんだ。
 これで気付かれなかったら、告白もしないまま終わっていたかもしれない。
 だから嬉しかった。本当に嬉しかったよ」

なぜだか胸が詰まって、喉が熱くなった。
赤毛の男子は今度こそ悲しそうに笑った。バレンタインの涙の理由を知ってしまった彼は、それでもバレンタインに罪悪感を抱かせないように、ただただ微笑んだ。

「あり、がとう……ありがとう、サス君」

こんなにも身近に、自分を気遣ってくれる人がいたなんて。
同じクラスなのに少しも話したことがなかったのに、こんな自分を見守ってくれていたなんて。

「良かったら受け取って。捨ててくれても構わないから。
 どうしても自分じゃ捨てられなくて……。
 未練を残して、君につきまとうなんて格好悪いことしたくないんだ。
 これからは同級生として、クラスメイトとして君と接することにするから」

何十にも重なった楽譜の束を渡される。

それじゃ、とサスは踵を返して去っていった。


しわがついてよれた楽譜には赤い印が何箇所もつけられていた。

どんな想いで、どれほどの時間を費やして、練習してきたのだろう。

音楽と恋に向き合う彼の、誠実な想いが見て取れた。
ラブレターよりもずっとずっと想いの丈が込められた楽譜だった。
バレンタインは風に飛ばされないよう楽譜を胸に抱いた。

「先輩、エルバ君。中庭の男子見てどうでしたか。
 楽しかったですか。満足しましたか」

書架に隠れる二人に気付きながら、バレンタインは続けた。

「私……こんなに自分が馬鹿だとは思いませんでした。
 人の恋心に、何も知らずに興味を持って、勝手に想像して……ホント、馬鹿みたい。
 なに考えてたんだろう……見守ってくれていたのに、ホント、馬鹿だ」

バレンタインは唇を噛んで、振り返った。
ばつ悪そうに顔をそらす二人の横を通って、バレンタインは図書館を出た。





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