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二次創作小説・オリジナル小説を掲載しております。

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レディ・バレンタインの忘れ物

散歩道の林を抜けたところに噴水広場があった。
噴水で戯れる子供たち。
肩を寄せ合う老夫婦。
井戸端会議に励む女性たち。
息を切らせたバレンタインは、呼吸を整えながらそれらを眺めていた。
涙をぬぐった手が、そのまま顔を覆う。

(しまった……)

鞄もヴァイオリンも全部置いてきてしまった。
今さら帰るには気まずすぎる。でも、お財布やヴァイオリンも心配だ。

「最悪」

情けなさでまた泣ける気がした。
どのタイミングで荷物を取りに戻ろうか。バレンタインが思いを巡らせている最中だった。
まさかここで聞くとは思わなかった声が、背中にかかった。

「バレンタイン!」

もし追いかけてくるなら、ユリだと思っていたのに。
エルバが肩を上下させて立っていた。
両手にヴァイオリンケースを持ち、肩から自分の鞄とバレンタインの鞄を掛けている。

「こら逃げるな、バレンタイン」

小動物のように警戒しながら後ずさる。無意識な行動。

「くそっ、荷物が」

走り辛そうにしながら、エルバが駆け寄る。
エルバが一歩足を踏み出せば、その分バレンタインも後ずさる。
だが、エルバの方が、足が速いのは当たり前で。
当然のように前方を塞がれてしまった。

「逃げんなよ。ん、荷物」

突き出されたヴァイオリンケースを受け取り、鞄も返ってきた。
エルバはほっと息をついた。

「二人は、その」
「帰った。別に怒ってないから安心しろ。むしろ、悪いことをしたって謝ってた」

そう、とか。
私のせいなのに、とか。
なにひとつ言えないまま、バレンタインはうつむいた。

「なあ、あそこ空いたから」

エルバは顎をしゃくって、さきほど老夫婦が座っていたベンチを示した。
並んで座り、子供たちが遊ぶ様子をじっと見ていた。
沈黙に耐えきれなくなったバレンタインは、震える唇を動かした。

「ごめんなさい、私、迷惑かけて」

スカートをぎゅっと握り、バレンタインはこぼした。
罪悪感と嫌われる恐怖に手のひらが汗ばみ、心臓が不安げに跳ねる。
エルバはふいにかけ離れたことを口にした。

「真実じゃないこともあるって、あれどういう意味」

バレンタインは内心ぎくりとした。

「噂の話をしたときも妙に歯切れが悪かったし、先生に褒められても笑わない話も引っかかってた。
 お前は、なにを考えているんだよ。俺の知らない、お前の真実ってなんだよ」
「どうして、そんなこと」

エルバはしばらく黙って、迷いもなくきっぱりと言った。

「気になるんだよ、お前のこと」






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