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レディ・バレンタインと中庭の噂

「なあ」

返事の代わりに、バレンタインは横顔を見せた。

「しばらく図書館通わなかった時、あったよな」
「うん」
「なんで? 俺が噂の話をしたから?」
「うん」
「もう行かないの」
「うん」

すこしの沈黙のあと、エルバは「そう」と静かに言った。
なにを考えているのだろう。
エルバを見つめたところで真意などつかめない。

「中庭の噂、知ってる?」

長い脚を組み、エルバは気だるげにベンチに両手をつけた。


「放課後、中庭で演奏している男子の話」
「それって。決まった時間に、中庭でヴァイオリンを弾いてる人がいるっていう」


エルバはわずかに驚いた顔をした。
お前が知っているなんて。そんな心の声が聞こえてきそうだった。
なにか言いたげに唇を動かし、やがて諦めたように息をついた。


「放課後はほとんどの生徒がすぐに帰宅したり、自主練したり、個人指導が入っていたりするだろ。
 だからその男子の正体はつかめてないんだ」


正体がつかめない。でも、それにしては。

「男子っていうのはわかるんだね」
「制服を見ればな。でも中庭の大木の影のせいで顔は見れないんだ。
 そいつも警戒心が強くて、正体を見られそうになるとさっといなくなるんだ」
「ふぅん」


中庭と聞いて浮かべるのは、ラウルと目の前にいるエルバだけだ。

だが、ラウルは正体不明の男子を追って図書館に来ていた。
エルバもこんな調子で話しているのだから、中庭の噂とは無関係だろう。


「エルバ君も、その人の正体を知りたいの?」
「えっ、なんで」


驚かれることを言ったつもりはなかった。
つられてバレンタインもしどろもどろになる。


「だって、とても詳しいじゃない。正体不明の男子の噂なのでしょう? でも、詳しいよね」
「それは。いいだろ別に。で、お前に訊きたいのは」


エルバは立ち上がり、バレンタインを真っ直ぐに見つめた。


「中庭って屋内だと図書館が一番見渡しやすいだろ。お前、そいつの正体見てないの」
「人に聞くまで知らなかったんだもの。私にはわからないよ」
「そう。まぁ、そりゃそうだよな。こんな反応だもんな」

なにが面白いのか分からないが、エルバは笑った。

「そんなに知りたいの」
「お前は知りたくないの。そいつ、いつも同じ方角を向いて演奏しているんだ。
 顔を隠したいなら、わざわざ中庭で弾かなくたっていいだろ。
 きっと、意味があって同じ方角を向いているんだ」

それに、とエルバは続ける。

「そいつが弾く曲は、いつも主題が恋愛なんだ。
 それも楽しい曲なんて一つもない。片想いの曲、悲恋の曲。そんなんばっかりだ」
「あの、それで。その、方角っていうのは」
「…………言わない」


予想外の反応にバレンタインは目を丸めた。
そこが一番気になるのに。
知りたい衝動に任せてバレンタインはせがんだ。


「ここまで話しておきながら、それはないよ」
「そいつの名誉のためだ。言えば引くだろ、確実に。ストーカーみたいなもんだろ」
「そんな言い方ってないよ」
「じゃあお前がされたらどうする。自分がターゲットになってみろよ、同じこと言えるの」
「それは……、でも」
「ほらな」


エルバは呆れたように肩をすくめ、ヴァイオリンを手にした。
これで噂話はおしまい。
彼はそう言ってヴァイオリンを奏でる。
優しい音色は公園に響き渡り、どこからともなく黄色い歓声があがる。
ふと見やると、同じ年頃の女子生徒がエルバに熱い視線を送っていた。
モテるなぁ。
たしかに立ち姿がいいし、背が高くて見栄えもいい。おまけに容姿もいい。

「もし、ね」

バレンタインは彼女たちを眺めながら、エルバに言った。

「もし、エルバ君が中庭の男子だったら嬉しいと思うよ」
 

ギュギギギギ。

突然――エルバのヴァイオリンから歪な音が鳴った。
バレンタインは絶句して、目を丸めてエルバを見た。
エルバは顔をそむけ、手の甲で口元を押さえた。

「お前が、変なこと言うからだ」
「ご、ごめんなさい」

反射で謝って、ふとバレンタインは目を瞬いた。
エルバの耳先が赤くなっているのを発見してしまう。
はっと我に返り、ようやく自分がとんでもないことを口にしたことに気付く。

「ご、ごめんなさい、私、そんなつもりじゃ」

妙な沈黙にバレンタインは赤面し、恥ずかしさを紛らわすためにヴァイオリンを弾いた。






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